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翻訳書ドミノ 第12回

(2015/07/11)

 今回は翻訳書ドミノの第12回。前回の『テメレア戦記 Ⅰ』から「主人公によくくり返す言葉がある」つながりで『火星の人』(アンディ・ウィアー著/小野田和子訳)へ。テメレアは「ふふん」、『火星の人』の主人公、マーク・ワトニーは……もちろん「イエィ!」(笑)



 もうね、この本はユーモア溢れる語り口がたまらんのです。先日、映画版の日本公開と邦題(『オデッセイ』)が決定して、ツイッターのタイムラインがざわめいていたけど、わたしは最初に映像が一部公開された時点でちょっと不安になりました。もしかしして、ふつうのサバイバル感動ものとして撮られてるのだろうか、原作のキャラクターのおもしろさ、滑稽さはどこまで生かされてるのかと。原作は主人公だけじゃなく、彼を救出するために地球でドラマを繰り広げる人たちも一癖も二癖もあっておもしろいんですけど。

 マーク・ワトニーはたぶん私的ナイスガイ・オブ・ザ・イヤー2015(刊行は去年ですが、わたしが読了したのはことしなので。ことしはまだ半年あるけどネ)。サバイバルに強くてユーモアも忘れないなんて最高でしょ。
 訳文も最高で、もう「すごーい、すごーい」と思いながら読みました。わたしもこんなふうに読むひとを楽しませられる翻訳ができるようになりたい。

 わたしはジャンル分けに詳しくないのだけど、本書はハードSFに入るのかな? 科学的な記述は多めです。
 以前のわたしは「こういう科学的な部分も細部まで理解して読まねば」と気負って自滅してしまうパターンだったんですが、最近は「なんか科学的な考察をしているわけね」とか「要するに深刻なピンチなのね」というおおざっぱなつかみ方で、よくわからない部分があってもとにかく先へ進むことにしています。そのほうがわたしは物語が楽しめるとわかったので。

 サバイバルものですから最後までハラハラさせられます。
 加えて、すでにユーモア、滑稽という言葉をそれこそ何度もくり返しているとおり、読書中にニヤニヤしたり、くすくす笑ってしまう作品です。でも、いきなりグッと目頭が熱くなる場面もあったり。それは作品の根底に流れているのが、ラスト近くでマーク・ワトニーが述べる、つぎのような考え方だからではないかと思います。

 ばかな植物学者ひとりを救うために、なんでそこ まで?
 (中略)一部はぼくが象徴しているもののためだろう――進歩、科学、そしてぼくらが何世紀も前から描いてきた惑星間宇宙の未来。 だか、ほんとうのところは、人間はだれでも互いに助け合うのが 基本であり、本能だからだと思う。そうは思えないときもあるかもしれないが、それが真実なのだ。


 話題作なのですでにお読みの方も多いと思いますが、未読の方は(ふだんSFを読まない方も)即チェック!の価値ありですよ~。


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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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