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翻訳書ドミノ 第11回

(2015/06/18)

 きょうは翻訳書ドミノの第11回。ヒューゴ-賞つながりで『テメレア戦記Ⅰ 気高き王家の翼』へ。前回の『図書室の魔法』は2012年にヒューゴ-賞を受賞、『テメレア戦記Ⅰ』は2007年にノミネートされ(受賞は惜しくも逃したものの)、ヒューゴ-賞と同時に発表されるジョン・W・キャンベル新人賞を受賞しています。



 4月に本書が課題として取りあげられた読書会に参加したことはこちらの記事に書きましたが、読書会に向け、本書を再読しているあいだはほんとーに楽しくて幸せな時間でした。
 タイトルの「戦記」という言葉から予想されるとおり、戦闘シーンがあり、それは(人間が乗った)ドラゴン同士の肉弾戦だったりするので、読んでいてつらい場面もあります。でも、特にこの1巻はドラゴンと人間のあいだに心の絆が結ばれたらどんなにいいだろうという要素が、これでもかというほど盛りこまれ、ドラゴンのテメレアとその担い手である英軍将校のローレンスのファンにならずにはいられません。
 もうね、テメレアがかわいいのですよ。光りもの好きで、ローレンスに金鎖や宝石を贈られて喜ぶ様子とか。それは記憶に強く残っていたのですが、今回再読してみて笑えたのがローレンスのテメレアに対するメロメロぶり。あ、ちなみにテメレアは♂です。でも、ローレンスがテメレアを喜ばせるためにプレゼントについて秘密にしておこうとするくだりなどはほとんど恋人みたいですし、テメレアの飛行がほかのドラゴンより優雅だと喜ぶところはかなりの親バカはいってます。
 テメレア以外にも個性豊かなドラゴンが多数登場し、それぞれの担い手とたがいを思いやる様子がこれまたいいのです。担い手に恵まれなかったドラゴンも登場したりするのですが……。
 この担い手に恵まれなかったドラゴンもそうですが、著者ノヴィクは社会的に弱い立場にある者を描くことを忘れません。下に引用するのは、2巻『翡翠の玉座』からの一場面。この巻でテメレアとローレンスは英国からはるばる中国まで旅します。

もっと狭い裏通りに入ると、疲れきったようすの青いドラゴンがいた。絹製の輸送用ハーネスでこすれた傷痕がいくつもあるそのドラゴンは、うまそうに焼きあがった牛からは悲しげに目を逸らし、脇に置かれた焦げすぎの小さな羊を注文した。そして羊を隅に持っていくと、肉をゆっくりと味わい、内臓や骨までしゃぶり尽くした。
(『テメレア戦記Ⅱ 翡翠の玉座』p.410より)

 2巻でわたしの胸にいちばん強く焼きついたのはこの場面でした。中国ではドラゴンが階級や労働に見合った収入を得ているという設定で、この青いドラゴンは(苛酷な労働をしているにもかかわらず)あまりお金がないんですよね。こういう描写があるところも、このシリーズにわたしが強く惹かれる理由です。

 航空機がまだ発明されていなかったナポレオン戦争の時代、各国がドラゴンを擁して空軍を所有し、戦っていたという設定もユニークですし、楽しいだけでなく読み応えもあるシリーズです。ドラゴン好きはもちろんのこと、人間と人外キャラのバディものが好きな人にはなんとも言えない作品だと思います。

 ところで、福島読書会に関する記事で、参加者さんについて、最初、栃木と書いていたところをちょっと訂正しました。わたしの勘違いだった気がするので。もう地理はおそろしく苦手だし(東京含む)、記憶はすぐ曖昧になるしでほんと情けないです。


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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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