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「小説の歓び〜書く、訳す、読む〜アリス・マンローをめぐって」

(2015/03/06)

 2月28日にB&Bで開催された「小説の歓び〜書く、訳す、読む〜アリス・マンローをめぐって」に行ってきました。マンローを訳していらっしゃる小竹由美子さんと文芸評論家の加藤典洋さんの対談です。

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 えー、実はわたし『善き女の愛』が初マンロー。そのうえ当日までには表題作と「ジャカルタ」しか読了できず、ちゃんとお話についていけるかなと不安を抱いてました。純文の書店イベントというのも初体験だったし。
 ところが! 会場に何度も笑いが起きる楽しいイベントでした。
 今回わたしがこのイベントに申しこんだのは、ふだん四国在住の小竹さんがいらっしゃるから。マンローがノーベル賞を受賞したあとだったかな、小竹さんが参加されるイベントが東京で開かれたことがあったのだけど、わたしは都合がつかず参加できなかった。参加した人が口をそろえて「おもしろかったよ~」と言っていたので残念に思っていたのです。
 小竹さんはとてもパワフルでとても頭の回転の速い方でした。加藤さんは大学で教えていらしたころなど、きっときびしい先生だったのだろうけれど、イベント当日はくつろいだというかくだけた雰囲気でお話なさっていた。ちょっと淀川長治風の語り口で、わたしはまずそこで親しみを感じてしまった。

 質疑応答の時間があったら小竹さんに訊きたいなと思っていたのが「マンローを訳す楽しみ、訳しがいがあると感じられるのはどんなところか」だった。そうしたら、お訊きする前に小竹さんから「(マンローの作品は)原書で読んだときと訳したあとで印象が変わるところがおもしろい」とお話があった。「曖昧さがあって読者はたいへん」とも。わたしがお話をうかがっていていいなと思ったのは「貧しく、教養のない人を描くときに上から目線じゃない」というところ。
 加藤さんからは「心のしわが深い」「視界が広く、焦点深度が深い」といったお話があった。
 マンローの作品は読む側の年齢や過去にどんな経験をしているかによって大きく解釈が変わってくる。わたしが今回初マンローでへええと思ったのは、表題作「善き女の愛」がミステリ的に読んでもおもしろそうな短篇だったこと。イベントでは未読の参加者さんもいらしたので、この作品にかぎらず「本を薦めるときにネタバレはありかなしか」をめぐって盛りあがったりもした。
 ミステリファンで「善き女の愛」を未読という方がいらしたら、ぜひ読んでみることをおすすめします。きっと読んだ者同士で語り合いたくなりますよ。あれは事故だったのか、事件だったのか? 主要登場人物のうち女ふたりの言っていることはどこまで(どれが?)本当なのか? あのあと男はどういう行動をとったのか? 「真相はこれだ!」という結論は出ないだろうけれど、幾通りもの可能性が飛び出して、解釈の違いを楽しめると思う。

 そういえば、マンロー自身が好きな作家はフラナリー・オコナーやカーソン・マッカラーズなのだとか。わたしが大学1年のときに授業の課題になってピンとこなかった南部女性作家たちだ(苦笑)。こちらに書いたマンスフィールドじゃないけれど、いま読み直せばおもしろさがわかるかなあ。

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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
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