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上手な訳

(2015/01/31)

 好みの訳文、うまいと思う訳文は人それぞれだと思います。その人が過去にどういうものを読んできたか、どういう環境で育ってきたかにも左右されるはずですし。
 少し前になりますが、この訳文をめぐる感覚の違いに呆然とする出来事がありました。わたしの訳文に関して何か言われたわけじゃありません。いまはネットで本の感想が簡単に読める時代ですので、わたしの同じ訳文について「好きだ」と言ってくださる方もいれば「読みにくい、苦手」と感じる方がいらっしゃるのも知っています。ただ、翻訳ものが売れる売れないとは別に「翻訳出版って、将来どうなっていくのかな」と不安になる出来事でした。
 この出来事については、何度も考えてしまうわりに、自分のなかでなかなか整理がつかない部分があります。でも、ただ悶々としたり、暗澹たる気分になっていてもしかたないので、少しでも何かしたほうがいいかなと感じました。
 一昨日、日本翻訳大賞の候補作を推薦してみたのですが、その際、推薦文掲載を断らなかったのもそのためです。機会があれば、自分がいいと思うものを主張し、それが少しでも人の目に触れる機会を利用するのは大事かなあと。あまりにちっちゃすぎるでしょうか?
 日本翻訳大賞の候補作推薦は、“木星の人”が『火星の人』を推薦していたりする(笑)のも楽しいです。もしまだご覧になっていない方がいらしたら、サイトをのぞいてみてはいかがでしょう。推薦も資格などありませんので、2014年に「いいな!」と思った翻訳書のある方はぜひ。推薦締切は2月5日です。
 わたしが推薦したのは翻訳書ドミノでもとりあげた『ふたりのエアリエル』。中村妙子先生はわたしが知っているだけでも巌谷小波文芸賞などを受賞されていて、わたしなどがあれこれ言うのは本当におこがましいですが、どの作品を読んでも端正ですばらしい訳文だなあと思います。

 今回のことで自分がどういう訳文をうまいと思うか、あらためて考えてみました。
 その際、ここ数年で訳文がすばらしいと思った作品としてすぐに思い出されたのが、光野多恵子さんの『少年は残酷な弓を射る』と山田蘭さんの『陸軍士官学校の死』でした。実はどちらも作品としては個人的にかなりの苦手ポイントがあったのですが、訳文は読みながら「うまーい、すごーい」と思った記憶がありました。その理由を考えてみると、訳文のトーンの統一感、作品世界の日本語での構築という点で完成度がとても高かったのだと思います。

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陸軍士官学校の死 上 (創元推理文庫)陸軍士官学校の死 上 (創元推理文庫)
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 いっぽう、使われている訳語のトーンにぶれがあったりすると、結果として登場人物のキャラクターが把握しづらく、薄っぺらに感じられてしまったりして苦手です。ああ、でも感覚が違うと、この「ぶれ」と感じるか否かも違うんですよね、きっと。

 なんか偉そうですか??? 抽象的でわかりにくいですか??? 翻訳のよしあしについてあれこれ書くなんて慣れないことなので、ご寛恕ください。もうちょっと具体的に書きたいこともあるのだけど、意図せぬ批判になってしまったりすると困るのでやめておきます。でも、自分のなかで少しでも整理したいという気持があったので書きました。
 人の好みについてとやかく言う資格はないけれど、わたしはやっぱり自分がいいと思うものに残っていってほしいし、同じような感覚を持つ仲間が欲しいのかな。

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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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