FC2ブログ

07

04

コメント

翻訳書ドミノ 第6回

 えー、いきなりですが前言撤回です。前回の翻訳書ドミノでつぎは短篇集につなぎたいと書きましたが、先日読了した本がとてもよかったので、“タイトルに地名がはいっている”つながりで、こちらの本につなげたいと思います。ちょっとだけネタバレありです。

マルベリーボーイズマルベリーボーイズ
(2009/10)
ドナ・ジョー ナポリ

商品詳細を見る


“マルベリー”はニューヨークのマルベリー・ストリートのこと。19世紀末、イタリア系移民が集まって暮らしていたニューヨークのスラム街です。主人公のドムことベニアーノがたった9歳で単身ニューヨークへ密航させられ、そこでたくましく生き抜いていく様子が描かれています。著者ドナ・ジョー=ナポリの祖父がドムのモデルだとか。
 19世紀末のスラム街の不衛生さ、悲惨さは読んでいてつらくなるときもありました。ドムが商売を始めてからは少年のサクセスストーリー的一面も帯びてきますが、パドローネ(イタリアからの移民を手引きし、アメリカで働かせて金を巻きあげる仲介人)や敵対するストリートキッズの影がちらつくので、展開はつねにサスペンスフルです。
 ドム、一匹狼のストリートキッドであるガエターノ、青果店の主人グランディネッティ、グランディネッティの店の客で未亡人のシニョーラ・エスポジート――みんな、ニューヨークで生き抜くために最初は警戒し合っていたけれど、徐々に相手を信頼し、心を開いていく様が秀逸。
 本作中でいちばん心に強く残る登場人物と言っても過言ではないのがピエトロ。彼はパドローネの元で物乞いをさせられていたんですが……もうね、わたしが大好きな『テメレア戦記 Ⅰ』に登場するレヴィタスと重なるところが多くて、ピエトロがたどる運命には泣いてしまった。
 数年前、某所で本書が話題にのぼり、とてもよいと聞いたので購入しました。ヨーロッパから移民が押し寄せてきた当時のアメリカ、人種間の差別や対立などについて知ることができ、大人も子供(小学校高学年以上)も楽しめる良書です。


管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL

http://rhiroko.jp/tb.php/39-52fe89df

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

*32*

Designed by

Ad