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翻訳書ドミノ 第5回

(2014/06/10)
 また少し間が空きましたが、今回は翻訳書ドミノの第5回。前回の『貧乏お嬢さま、古書店へ行く』から“貧乏なヒロインがスパイにスカウトされる”つながりでこちらの本について書きたいと思います。

バグダッドの秘密

バグダッドの秘密 (クリスティー文庫)バグダッドの秘密 (クリスティー文庫)
(2012/08/01)
アガサ・クリスティー、中村 妙子 他

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 貧乏お嬢さまのシリーズを読んでいる途中、雰囲気が似てると思い出されたのがこの『バグダッドの秘密』でした。わたしは昔から冒険ミステリ的な要素が強い作品が好きだったので、本書はたしか中学生のころに読んだのですが、とても楽しく読んだ記憶がありました。
 今回、30年以上ぶり(?)に再読してみたましたが、バグダッドにいるダキン氏とクロスビー大佐が謎めいたやりとりを交わし、アメリカの銀行に勤める有能な頭取秘書アンナ・シェーレがロンドンで姿をくらます冒頭はほんとに読者を引きこむのがうまいなあと感じました。詳しい内容はほとんど憶えていなかったくせに(苦笑)懐かしさを覚えたり。
 お金がないヒロインが裕福な女性のお供として異郷へ行き、冒険をするというストーリーには、大人になってもわくわくさせられました。物語の舞台は1950年代ですから、ロンドン→バグダッド直行便などなく、ヒロインのヴィクトリアたちは途中カイロに寄ります。そこでヴィクトリアはバグダッドまでの雇い主、ミセス・クリップのはからいでピラミッド見学ツアーに参加できることになるんですけど、そういうささやかなエピソードもうらやましいなあと感じたりしました。
 すっかり忘れていたのが主人公ヴィクトリアの性格。お転婆なタイプという印象しかなかったのですが、公園で一度会ったきりのハンサムな男性がいるからという理由でバグダッド行きを決めてしまうあたり、なかなか無鉄砲な“必要もないのに事件に飛びこんでいく”型ヒロインです。わたしは今回再読してもあまり気になりませんでしたが、大人になってから初めてこの作品を読むと、人によっては彼女の言動に抵抗を感じるかもと思いました。 
 中村妙子氏による訳者あとがきに“政治的、国際的な問題を扱うときのクリスティーは、柄でもないことをやっているという気がちょっとしないこともないが、『バグダッドの秘密』にはエンタテインメントの要素がたっぷりあって”とあるとおり、本書はまさにエンタテインメント作品。楽しそうに書いているクリスティの文章に乗って、あまり細かいことは考えずに読むのが吉と思います。とはいえ「ああ、やっぱりクリスティ」と感じる辛口の人間観察に、はっとさせられる部分もあったりするんですけどね。

 翻訳書ドミノ、つぎは初めて短篇集につなげようかなと思っています。
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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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