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リグニン???

(2014/04/22)
 予約が始まったあと、このブログの新刊のコーナーに登録してありました『ペナンブラ氏の24時間書店』、おかげさまで紙の本と電子書籍と両方発売になりました。
 きょうはこの本を訳すに当たって困った調べものについて書きたいと思います――って、調べもの困ったエピソードは前にも書いてましたね。いつの間にかシリーズ化。

Later, after an hour of late-night isolation and lignin inhalation have sobered me up, I do two things.

 ↑これは主人公のクレイ・ジャノンが勤める不思議な24時間書店に、若い女性客キャット・ポテンテが訪ねてきた直後の場面。キャットはグーグルの社員で、クレイが自作したコンピュータ・プログラムのバグを見つけ、あっという間に解決してくれました。彼女が帰ったあと、ポーッとしていたクレイ(キャットはとてもユニークでチャーミングなんです)はやっと気持ちが落ち着き、行動に移ります。なんの行動かはぜひ本書でご確認を(笑)。
 さて、ここでわたしがわからなかったのは“lignin”。辞書には「リグニン、木質素」などとあります。“inhalation”は「吸入」だから、何か軽い精神安定剤みたいなものを吸入したのかなあなどと想像しました(クレイのキャラじゃないんですけどね)。でも、ググってもリグニンに関する化学的な説明が見つかるばかりだったので、ほかの疑問点と一緒にネイティブスピーカーに尋ねてみました。すると「うーん、わからないなあ」という反応。「一種の精神安定剤の可能性はある?」と訊いたところ、「あるかもしれないね」という返事でした。とりあえず、説明はつけず、「リグニン」とカタカナにしただけの状態で訳稿は納品しました。
 本書の校正に入る前に、わたしは原著者のロビン・スローンに確認したいことがひとつありました。訳文自体には影響なかったんですけどね――って、それなら、確認しなくたっていーじゃん! なんですが、それはまあ置いといて(苦笑)。ligninについてはその際、著者に直接メールで質問してみました。すると次のような返事が。

The smell of books comes largely from lignin; it's in the paper! More info here: http://blogs.smithsonianmag.com/smartnews/2013/06/that-old-book-smell-is-a-mix-of-grass-and-vanilla/

ロビン・スローンが教えてくれたリンク先にあったのは次のような説明――“Lignin, which is present in all wood-based paper, is closely related to vanillin. As it breaks down, the lignin grants old books that faint vanilla scent.”
 要するにリグニンはバニリン(バニラの香りのもと)と構造が近似していて、紙の中に存在する物質で、それが分解するにつれ、古書はバニラっぽいにおいがするようになるってわけなんですね。なるほど! 確かに古書ってちょっと甘い香りがする気が。納得! つまり原文で著者が書いているのは「クレイは書店に漂う本のにおいをかいでいるうちに気持ちが落ち着いてきた」ってことだったんです。
 しかし、これはこのスミソニアン博物館の記事を読んでないとピンと来ない人多いんでは……とか思ったんですが、どうなんでしょう。辞書の“lignin”の項に「木材パルプ中の不純物」という説明はあったので、わかる人にはすぐわかることなのかなあ……ダトシタラ、シツモンシテシマッタワタシノタチバハ……。
 ともあれ、調べもの困った→人頼みシリーズ、「同級生に助けてもらいました」「ネイティブに助けてもらいました」に続き、「原著者に助けてもらいました」篇でした。

 本書についてはまた書くことがあるかもしれませんが、きょうはこの辺で~。

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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
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訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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