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ワニ町6巻もうすぐ🐊 と刊行部数が少ない作品について

(2023/8/29)

 あまりの酷暑に「あっという間」という感じではありませんが、早くも8月末。わたしが翻訳を担当しているワニ町シリーズの6巻刊行が31日に迫ってまいりました。ということで、今回はそのワニ町関連の話題と、翻訳者であるわたしが初版部数の少ない本について感じていることを少しまとめたいと思います。

 ワニ町こと『ワニの町へ来たスパイ』から始まるジャナ・デリオンのシリーズですが、8月10日に1〜4巻が同時重版となりました。この同時重版が決まったのは、こちらのブログでもご報告した教文館キリスト教書部さんでの読書会の直後。読書会を企画してくださったスタッフのみなさん、参加してくださったみなさんには、ワニ町のポテンシャルを目に見える形にしていただきましたこと、あらためて御礼申しあげます!
 先日から著者公認無料ガイドブック——シリーズ装画担当の松島由林さんのイラスト満載!——も配信されています。東京創元社のウェブサイトでは、電子書籍用のアプリがなくても読めるブラウザ版も用意されていますので、ご興味のある方はぜひ、チェックしてみてください。大矢博子さんによる2巻解説も収録されているそうです。
 また、↑上記の読書会を開いてくださった教文館キリスト教書部さんでは、オリジナルの予約特典をご用意くださっています。欲しい!という方、イーショップでも受付中とのことですのでこちらもご確認くださいませ。
 このほか、紀伊国屋書店新宿本店さんや丸善京都本店さん、未来屋書店三田ウッディタウン店さんなどでは、シリーズ全巻がそろったフェアを開いてくださっていて、前回も大好評だった応援ペーパーのバージョンアップ版が配布されています。ワニ町応援団やメイトの方にとっては既刊を思いだすときのおともに、未読の方にはシリーズの雰囲気をつかむのに最適のはずですので、お立ち寄りの際はぜひぜひお手に取ってみてください。

 さて、初版部数の少ない翻訳書についてです。
 先日、ワニ町の1〜4巻の同時重版をお知らせしたときにもちらっと投稿したのですが、2巻や3巻で刊行がとまってしまうシリーズのなかには「潜在読者に知られていないだけ」の作品があるのではないかと強く感じています。リアルにしろネットにしろ、書店に本が溢れているいま、読者のみなさんに「本の存在を知ってもらうこと」自体のハードルがとても高くなっているからです。刊行日前後に書名や著者名、あらすじなどが紹介されるだけだと、書店どころか同じレーベルのなかでも埋もれてしまう作品ってあるのではないでしょうか。
 版元も限られたリソースの配分に苦心しているのだろうなあとは思います。ただ、せっかく刊行しているのだから、少部数しか印刷されない本についても、もう少しできることがあるのではという気がするのです。これは版元や担当者によって「いや、当社は(わたしは)ちゃんとやってますよ」という場合もあるとは思うのですが。
 お金やものすごく手間をかけた宣伝を打ってほしいというわけではありません。ただ、スタートダッシュがうまくいかなかった作品についても、実際に読んだ人の感想をチェックして、SNSでのプロモーションに活用するなどしてもらえないでしょうか。
 翻訳者のなかにはフォロワー数が多くて拡散力のある人もいますが、本来は裏方的な仕事ですし拡散力には限界があります。いっぽう、出版社や編集者のアカウントは一般的に翻訳者よりも一桁か二桁多いフォロワーさんがいます。そのアカウントの力をぜひ活用してほしいのです。
 具体的には、好意的な感想投稿に「いいね」を押したり、ほかの読者さんの参考になるのではというコメントをRT/RPなどしてもらえないでしょうか。ご自身のフォロワー数はそれほど多くなくても、本の魅力を伝えるのがとても上手な読者さんはいます。また、一般の読者さんだからこそ、同じ立場の読者さんに響く視点で書けることもあると思うんです。そういう読者さんと版元公式もしくは準公式アカウントの力が合わされば、よい方向に動きだすケースもきっとあると思います。

 ここでちょっとジャンル違いですが、以前このブログでも記事にしたFFX歌舞伎の公式アカウントの話をしたいと思います。公演期間中、ゲームと歌舞伎の両方に明るいファンの方によってFFX歌舞伎に関するスペースが配信されたことがあったのですが、そのとき公式アカウントの評価がとても高かったんです。「ふつうなら、公式さん、もっとしっかりしてよ!と感じたりするけど、今回はそれがない」と。わたしもうなずきました。公演期間中、#FFX歌舞伎 を毎日チェックしていたことはブログ記事にも書きましたが、公式アカウントが観客のツイートにちゃんと目を配っていることが感じられたからです。たとえば「会場に自販機がないから、飲みものの調達は近くのコンビニで」とツイートをしている人がいると、「キッチンカーの後ろに隠れてますが、自販機はあります」という情報に加えて、近くのコンビニの場所もわかりやすく案内していました。ほかに観劇ルールを守っていない人がいるという苦情ツイートがあったときは、あらためてルールの確認のためのツイートをしたり。そうした対応が適切かつわりとすばやかったので、公式アカウントが観客の声を大事にしていることがこちらにもしっかり伝わってきました。

「専任の担当者は置けないから、細やかな対応は無理」という場合もあるとは思います。でも、ときどきでも、少部数の作品についても、版元が気にかけていることが読者に伝われば、読者も版元を信頼するだろうし、もっと応援しようと思って、さらなる投稿を工夫してくれたりするのではないでしょうか。
 いまのままでは、シリーズものの多くを2、3巻で刊行終了にさせるしかない状態がさらに悪化し、読者のみなさんの版元に対する期待や信頼感が失われるばかりという悪循環が続いてしまうかもしれません。
 そうすると数少ない(ジャンル)読者を囲いこもうと、各社・各担当者がさらに必死になり、売る側も読む側もなんだかつらく、あまり楽しくない道をひたすら進むしかなくなるような気がするのはわたしだけでしょうか。

 いま_| ̄|○ となってる出版翻訳者、少なくないと思うんです。版元のなかには、いまのきびしい状況について申し訳ないと言ってくださる方もいますが、社内での対応に統一が見られず、かえって不透明感が増してしまう場合も……。↑上でわたしが書いたことについて、「あほらし……」と思う関係者もいるかもしれませんが、翻訳料(印税)や刊行部数の面でどうにもできないなら、部数の少ない作品についてももう少し「何か」できることをさがしていただけないでしょうか。版元もしくは担当者が努力していることがわかれば、翻訳者としても少しだけ気持ちが楽になると思います。それにその努力は、翻訳者に対する「お詫びのため」だけに終わらず、じわじわとかもしれませんが、版元にとってもプラスの効果となって返ってくるはずです。
 ワニ町の邦訳は3巻までで終わりになりかけたところを、読者や出版関係者のみなさんのお力で救われました。その後、シリーズ名を広く知っていただけるようになったのは、引きつづきみなさんに応援していただけていることと、キャンペーンなどを通じて版元の力が発揮されているからだと思います。
 読者さんのあいだでの「うねりが大きくなってから」ではなく、もっと前から目を配っていれば、そしてそのことが読者さんにも翻訳者にも伝わる形で行われれば、続いて刊行できるシリーズも増え、本来好みが多様であるはずの読者さんに多様な作品をお届けできる、各方面にとって(ちょっと地味かもしれないけれど)心地いい状況が実現できたりするのではないかな、と思ったりします。

 もっと短くまとめたかったのですが、結局長くなってしまいました……。 何かと変化のスピードが速いですし、わたし自身の考えもまた変わる可能性もあると思います。うまく書ききれていないこともあるので、あらためて記事にするかもしれませんが、今回はひとまずこの辺で。
(このブログを読みにきてくださっているのはたぶん、読者さんや同業の翻訳者さんかなとは思うのですが、今回のようなことはやっぱり一度書いておきたかったので。もし版元関係の方に読んでいただけた場合は、どうかなにとぞ……🙏)

がらくたどん

ワニ街6巻読みました。アイダやガーティの「自分たちの鼻先で何という!」という動揺、フォーチュンの人間味とカーターへの想い。大爆走の爽快感だけでなく人生劇場的な深みも増してきたようでとても楽しかったです。夫が「次は僕」と待っております(笑)後書で次巻も準備にと。心待ちにいたしております。翻訳エンタメのメディア紹介は国内文学賞の話題作より控え目でもったいないですね。でも読んだ方達はとても楽しんでおられますよ。
https://bookmeter.com/books/21415863

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11:46

島村

がらくたどんさま
6巻お楽しみいただけたようで嬉しいです。旦那さまにもご満足いただけますよう! おかげさまで続刊を楽しみにしてくださる方が増えてきたので、今後は順調にお届けできるといいなあと思っています。
ところで伊藤遊さんの『えんの松原』読みました! 伴内侍のキャラクター、いいですね! 現代社会と重ね合わせて唸ってしまう記述も多く、読みごたえがありました^^

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21:45

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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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