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翻訳書ドミノ 第3回

 きょうはちょっとあいだが空きましたが、翻訳書ドミノの第3回。前回のナルニア国の父 C・S・ルイスからつなげます。
 C・S・ルイスは50代後半になってからアメリカ人のジョイ・デヴィッドマンと結婚し、ジョイと彼の物語はShadowlands(〈永遠の愛に生きて〉)というタイトルで映画化され、ルイスをアンソニー・ホプキンスが演じました。そこで今回は「映画にアンソニー・ホプキンスが出演した」つながりで、チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)について書きたいと思います。

チャリング・クロス街

 本書はニューヨーク在住の脚本家、ヘレーン・ハンフとロンドンの古書店マークス社をめぐる人々(おもに古参店員のフランク・ドエル)との心温まる往復書簡集です。わたしがこの本と最初に出会ったのは20年ほど前、まだ翻訳のワークショップに参加していたとき。原書の一部が課題になったんですだけど、邦訳を読んでいた人のなかにすごく熱烈なファンがいたのを憶えています。昨年、本書についてTwitter でつぶやいたら、「わたしも好きです!」という返信を何件かいただき、やはりファンが多い本だなと感じました。
 ヘレーン・ハンフとマークス社のあいだで手紙のやりとりが始まったのは1949年。第2次世界大戦が終結してすでに4年の月日が経過しているのに、戦勝国であるイギリスがまだ深刻な物不足に苦しんでいた様子が本書を読むとよくわかります。同じ連合軍側のアメリカとの経済状況の差にあらためて驚かされました。

“ところで、そのブライアンさんのお話ですと、お国では食糧が配給制で、肉は一週間に一世帯当たり六〇グラム足らず、卵は一カ月に一人当て一個なのだそうですね。ほんとうにびっくりしました。ブライアンさんは当地にありますイギリス商社のカタログを持っていらっして、デンマークからイギリスのお母様に食料品を航空便で送らせています。私もマークス社のみなさんにささやかながらクリスマス・プレゼントを送らせていただきます。”(本文p.22)

 本についてのやりとりも面白いんですけど、ヘレーンがときどきプレゼントを贈るようになったあとのマークス社の人々(店員の家族も含む)の喜びぶりや、彼女へすてきなお返しが贈られたことが書かれているくだりを読んでいると、もう自然と笑顔になります。
 読みたい本が電書で瞬時に手に入る現在を便利だと思う反面、「この本に描かれているみたいに思いきりアナログな時代に読書を楽しんでみたかった」なんて気持ちにもなりました。

 そうそう、昨年、濱中利信コレクション「エドワード・ゴーリーの世界」を観にいったとき、パンフレットにすてきなエピソードが載っていました。ゴーリーの作品を集めはじめて間もないころ、ネット検索をしていた濱中さんは、とあるアメリカの古書店のウェブサイトにたどり着き、その後そこのご主人からメールでゴーリーについてさまざまなことを教えていただいたそうです。紙の書簡ではなくEメールでですが、この濱中さんのエピソードを読んだとき、わたしは本書に通じるものを感じました。

 読中読後感がとてもいい本です。わたしは精神的にきつい本と並行して本書を寝る前にちょっとずつ読み、安眠導入書(笑)として利用しました。
 映画はレンタルがないようだったので、廉価版のDVDを買って観ました。フランク(をアンソニー・ホプキンスが演じています)の妻ノーラ役でジュディ・デンチが出演しているんですが、映画版のノーラは原作と違った(少しキツイ性格に)描かれていて、そこがちょっとだけ残念でした。それ以外は原作の雰囲気がよく出ていて、主演のアン・バンクロフトもユーモア溢れるヘレーン役にぴったり。本好きの方には特におすすめです。

 次回は○○○つながりで、昨年刊行されたミステリ作品について書く予定です。
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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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