FC2ブログ

02

24

コメント

「ゲイの登場人物は——」と言われたブロックマンの15年

(2018/02/24)

 わたしがジュールズ・キャシディというキャラクターを創造したのは息子のジェイソンがカムアウトするよりもずっと前のことです。ジェイソンがゲイであると自覚できる年齢になるよりもずっと前、彼がまだほんの子供のころでした。
 でも、当時から、わたしはジェイソンがゲイではないかと思っていました(そう思われる節がいくつかありましたからね!)。そして世の中に目を向けると、受容と許容に関して、人々の姿勢が変わりつつあることが見てとれました。でも、わたしからすれば、変化の速度はまだまだ遅かった。
 そこで、トラブルシューターズ・シリーズの世界にジュールズ・キャシディを送りこんだのです。アメリカを偉大な国にしているのは多様性だと信じているからだけでなく、カムアウトして自分に自信を持っている——おまけに敏腕のFBI捜査官でもある——ゲイの男性を読者のみなさんに紹介したくて。


 いきなり引用から入りましたが、2015年に刊行されたスーザン・ブロックマン『薔薇のウェディング』著者あとがきの冒頭部分です。ほかの場所でブロックマンは、初めてゲイのキャラクターを自分の作品に登場させようとしたとき、編集者から変更を求められたと語っていました。少し前にロマンス小説に関する英文記事のなかで、そのときのエピソードが紹介されていました。

 1992年に初めて出版契約を交わすことができたコンテンポラリー・ロマンス小説に、彼女は脇役としてゲイの保安官を登場させていました。ところが、編集者から電話がかかってきて、このキャラクターをゲイではない設定にするようにと言われたそうです。電話を取った隣の部屋では彼女の息子と娘が遊んでいて、その息子がまだ3歳か4歳のときからブロックマンは彼がゲイであることをほぼ確信していました。「いまわたしは、息子のような人物はロマンス小説の脇役としてすら登場してはならないと言われている」——彼女が衝撃を受けたときのことが、映像としてありありと思い浮かぶ回想です。
 当時まだ新人だった彼女には、編集者に「ノー」と言う力がなかった。そこでその保安官には外国にいて物語に関わってこない妻がいる設定に変更されました。でも同時に、ゲイのキャラクターを物語に登場させられる作家としての力をつけようと、彼女は心に誓ったそうです。

 『薔薇のウェディング』の原書 ALL THROUGH THE NIGHT がアメリカで刊行されたのが2007年。ブロックマンにとっては長い道のりだったと思いますが、15年間のうちにゲイのカップルが結婚するロマンス小説を大手出版社から刊行するところまで持っていった彼女の努力は、心からすごいとあらためて思いました。



管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL

http://rhiroko.jp/tb.php/172-f3b71986

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

*32*

Designed by

Ad