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『隠れナチを探し出せ 忘却に抗ったナチ・ハンターたちの戦い』

 さ、寒いですね〜。東京も約50年ぶりの寒波襲来とやらで、外に出るときには防寒第一の服装です。

 さて、本日は先月刊行になった『隠れナチを探し出せ 忘却に抗ったナチ・ハンターたちの戦い』(アンドリュー・ナゴルスキ著/亜紀書房)についてです。そう、先月は『ワニの町へ来たスパイ』と本書と、わたしが翻訳を担当したまったく異なるタイプの本2冊が刊行になったのでした。

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(↑メインタイトルに箔押しが使われていて、とてもかっこいい装丁です。写真ではわからないかな)

 本の内容については出版社サイトの紹介などをご覧いただくことにして、ここではわたしが本書に関連して感じたことについて少し書きたいと思います。散漫な内容になりますので、まとまった文章としては書店で本の訳者あとがきをご覧いただければ幸いです。

 訳者あとがきにも書きましたが、第二次世界大戦を実体験として語れる人が日に日に少なくなっているなか、本書のようにベテランジャーナリストが存命中の当事者、関係者に丹念な取材を行い、それをまとめた本が持つ意味は今後ますます大きくなるばかりだと思います。と同時に、カズオ・イシグロがノーベル賞受賞の際のインタビューなどで繰り返し述べているように、これだけの時間がたったいまだからこそ、向き合える過去というものもあるのではないでしょうか。

 先日やっと、録画しておいたNHKスペシャル〈731部隊の真実〉を観ました(最初に放映されたときは、『隠れナチを探し出せ』に登場する第二次世界大戦関連の本や映画を続けて読んだり、観たりしたあとで、心を揺さぶられ、考えこむことも多く、なかなか観る気になれなかったのです)。あのような番組の制作が可能になったのも、戦後70年以上という時が過ぎ、機密扱いだった資料が公開されたり、人体実験に関与した人の遺族が故人の日記の提供に踏み切ったり——これはたいへん勇気の要る決断だったと思います——ということがあったからと言えるでしょう。

 731部隊といえば以前『屋根裏部屋の秘密』(松谷みよ子著・偕成社文庫)を読んだときにも衝撃を受けました。そのときのことはこちらの記事にちらっと書いています。『屋根裏部屋の秘密』の解説で、児童文学作家の砂田弘氏は次のように書いていらっしゃいました。

 日本の民主主義に黄信号がともるようになったのは、この作品が書かれた一九八〇年代後半からである。日中戦争は侵略戦争ではなかったとか、当時の大臣たちの問題発言が次々ととびだすようになったのである。これらの大臣は、中国をはじめアジア諸国のきびしい抗議をうけて辞職に追いこまれたが、そうした発言に対し、肝心の日本の国民の反応はいま一つ鈍かった。(中略)わたしたちはいつのまにか、歴史の教訓に学ぶという姿勢を失いはじめていたのである。
 二十一世紀に入ると、その傾向はさらに強まっていく。(中略)このまま進行すれば、日本の民主主義に赤信号のともる日はけっして遠くないだろう。

 砂田氏がこれを書かれたのが2005年。いまはしっかり赤信号がともってしまっている気がして途方に暮れそうになります。ただ『隠れナチを探し出せ』を訳していて印象に残ったことに、アメリカのTVドラマ〈ホロコースト〉が当時(1970年代)、ナチス時代の行いを忘れようとしていたドイツ社会の空気を変えるのにひと役買ったというエピソードがあるんです。日本でもあのドラマが心に深く焼きついている人は多いはず。
 単独では無理でも、本や映画、ドラマには社会を変えていく力がある。そのことを信じ、わたしももう少し、小さなことでも自分にできることを考えてみたいと思います。
 本書の訳出の参考になった本や映画など、また折に触れて記事にできればと考えていますが、きょうはこの辺で。

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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
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訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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