FC2ブログ

01

14

コメント

翻訳書ドミノ 第2回

 きょうは翻訳書ドミノの第2回ということで、前回の『贖いの日』からつなげます。
 『贖いの日』の主人公、ピーター・デッカーはユダヤ系アメリカ人ですが、生まれてすぐ養子に出されたこともあって、30代までユダヤ教とはあまり縁のない生活を送っていました。しかし、担当事件を通して出会った正統派ユダヤ教徒であるリナ・ラザラスの影響で――というか、彼女と結婚したくて(笑)――ユダヤ教について学びはじめ、信仰心を持つようになります。
 そこで、今回は“人生途中で信仰に目覚めた男”つながりでナルニア国の父 C・S・ルイス(マイケル・ホワイト著/中村妙子訳/岩波書店)をご紹介したいと思います。

ナルニア国の父 (800x450)


 ルイスは無神論者的な時期もあったのですが、30歳ごろから神を信じるようになりました。彼の人生を語るには宗教家としての側面を無視できないものの、元GQ誌のライターである本書の著者マイケル・ホワイトは、まえがきに「一人のファンとしての立場からルイスについて考えてみたいと思っている」と記していて、クリスチャンとしてのルイスやアカデミックな研究者としてのルイスに偏らない内容を目指しています。

 そんな本書でわたしがおもしろいなと思ったのは、ルイスが死ぬまで愛したオックスフォード(大学)の当時の様子が詳しく書かれている点です。20代後半でモードリン・カレッジのフェローとなると、スカウトと呼ばれる用務員がついて、まるで“貴族のような待遇”を受けたこととか、当時の大学人はファッションの面から“ハーティーズ:元気者(スポーツ好きでシンプルな装いを好む)”と“エスティート:洒落者(派手な装いが好き)”に大別されたことなどなど。

 ルイスとJ・R・R・トールキンの親交が深かったことは有名ですが、ダニエル・デイ=ルイスのお父さん、セシル・デイ=ルイスも彼らと同じ時代にオックスフォードで教鞭をとっていたんですよね。C・S・ルイスとC・デイ=ルイス――名前が似ているこのふたり、C・デイ=ルイスのほうは桂冠詩人に選ばれ、オックスフォードの教授にもなったのに対し、C・S・ルイスは詩作では評価が得られずに早期に断念、大学教師としてもケンブリッジ大学が中世文学の課程を新設した際に教授として招かれるまではずーっとフェローのままでした。この理由をわたしはこれまで「ルイスが政治的駆け引きなどが下手な人だったから」と思っていました。ところが! 本書によると、ルイスってば、オックスフォード学内に敵を作るようなあることを過去にしていたんですね。それも信念に基づいた行動などではなく、“ノリでやってしまった”系。それで、1951年に詩学の教授ポストが空いたとき、C・S・ルイスの対抗馬としてC・デイ=ルイスがかつぎあげられたんだとか……。いや、このいきさつは知らなかったので驚きました。

 本書でちょっと気になったのは、ルイスの考え方などについて、典拠を記さずにさらりと断定しているところがあること。そこだけ気をつければ、ナルニアやルイスについてもっと知りたいという方はもちろん、当時のオックスフォードの学者生活に興味がある方にも、本書は参考になる本だと思います。
管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL

http://rhiroko.jp/tb.php/15-4dcf1261

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

*32*

Designed by

Ad