FC2ブログ

12

30

コメント

翻訳書ドミノ 第1回

 みなさま、新年を迎える準備は進んでいますか? わたしは大掃除がまだほとんどこれから(苦笑)。

 さて、きょうは年内最後の更新です。今回は先月の記事で予告していた《翻訳書ドミノ》の第一回。
 初回は拙訳の『感謝祭は邪魔だらけ』からつなげます。『感謝祭は邪魔だらけ』は主人公のソフィが運悪く二度も死体の発見者になってしまい、警察から容疑者扱いされながらも、感謝祭のお客のもてなしに必要な家事をもりもりこなしていくという内容です。
 解説で書評家の大矢博子さんが書いてくださっているように、感謝祭は家族親戚に加えて友達やご近所さんまで一同に集まることがある、アメリカの家庭にとってはとても大事な年中行事。そこで、やはり一族全員集合的な年中行事、ユダヤ教のローシュ・ハシャナー(新年祭)の様子が描かれている『贖いの日』(フェイ・ケラーマン著/高橋恭美子訳/創元推理文庫)につなげたいと思います。

day of atonement

 『贖いの日』はロス市警の刑事、ピーター・デッカーが主人公のミステリー・シリーズの第4作。シリーズ前半の頂点と言ってもいい傑作です。わたしはこの本のラストシーンで何度涙を流したかわかりません。
 わたしはこのシリーズをどちらかというと普通小説のような気分で読んでいました。最初は特にデッカーと、彼が担当する事件を通して出会ったリナの関係がどう進んでいくのかに興味を惹かれ、また、日本で暮らしているとなじみのない正統派ユダヤ教徒の生活がわかりやすく描かれている点もおもしろかった。この4巻の冒頭で、デッカーとリナのロマンスは結婚という形で一段落し、本書で描かれるのは養子として育ったデッカーと生みの母親との邂逅です。
 この生みの母親が本書の最後にする決断が、なんとも胸に迫るものなのです。彼女が決断をするところや、それを行動に移した場面は描かれていません。でも、ラストシーンを読みながら、その書かれていない場面、そのときの彼女の心境を想像すると……と書いているだけでも涙がこみあげてきます。
 いま本書がふつうに流通していないのはとてもとても残念。版元さんにはこのシリーズの1巻から4巻まではぜひ復刊してほしいなあと、ファンとしては切に願います。
 ふだんミステリーはあまり読まないという人にも、本書は家族小説としての読み応えがあるので強くお薦めします。個人的にはデッカーと、リナの連れ子であるサミーとジェイクの会話がとても好きで、そこも何度も読み返しています。
 お読みになる際はぜひ1巻から! この前の第3作、『豊穣の地』も心を揺さぶられるすばらしい作品です。

 ピーター・デッカー&リナ・ラザラス・シリーズについてはまだまだ書きたいことはいっぱいあります。自分がどうしてこのシリーズにそんなに惹かれたのか、あらためて整理したいという気持ちもあるのだけれど、長くなるのできょうはこのへんで。
 フェイ・ケラーマンについては訳者の高橋恭美子さんが翻訳ミステリーシンジケートのウェブ・サイトに紹介記事を寄稿されているので、そちらもご覧になってください。

 それではみなさま、よいお年を! 

 

管理者にだけ表示を許可する

この記事のトラックバックURL

http://rhiroko.jp/tb.php/13-7d26b011

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

*32*

Designed by

Ad