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人称名詞

(2016/04/13)

友人「東京の男は自分のことを“ぼく”とか言うから好かん」
私 「じゃ、なんて言えばいいの? おれ?」
友人「ううん、わし」
私 「え、わし???」

 学生時代、或る県出身の同級生と↑のような会話を交わしたことがありました。まあね、「わし」が標準という人からすれば「ぼく」は違和感ありまくりだったろうなあ。

 翻訳をしていると人称名詞をどうするかは、ときに頭を悩ませるところです。いっぽう、読者の方は「え、この人に“ぼく”とか言わせちゃうの?」と疑問に感じた経験があるかもしれません。

 以前——確かめたらもう10年ほど前だった(汗)——翻訳者が集まる読書会で、一人称ではなく、二人称の訳し方が話題になったことがありました。課題書に凶悪な男ふたりが登場し、そのいっぽうが仲間を「あんた」と呼ぶんです。参加者のひとりが「ここ、“あんた”を使うのかと(意外に)思った」と言うと、(大人数の会ではなかったんですけど)ほぼ全員が同感の意を表しました。「でも、読みすすむと、やっぱり“あんた”なんだよねえ。“おまえ”じゃなく」最初に指摘した人がそう言うと、ふたたびほぼ全員がうなずいたように記憶しています。
 その読書会に参加していた人のなかに、たまたま直後に課題書の訳者さんに会った人がいて、「二人称の訳し方が読書会で話題になったんです」とお話したら、大ベテランのその訳者さんは「これだから同業者の読者はいやなのよ〜」と笑っていらしたとか。

 最近はLGBTをめぐる問題と関連して、he/she の代わりに単数のthey を使うという動きがありますが、これも使われ方によっては訳すときに考える時間が長くなりそうだなと思っています。去年読んだ本の訳者あとがきで、その点に触れていらっしゃる方がいらしたので。

 能町みね子さんの『おカマだけどOLやってます。完全版』には、まだ男性として会社に勤務していたころ、同期の女子に「アンタって、僕とか俺とか、自称を言わないよね」と指摘されたエピソードが載っていました。翻訳でも人称名詞をなるべく省いていくのはひとつの手。でも、どうしても必要になってくる箇所もあるんですよねー。






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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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