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翻訳書ドミノ 第15回

(2015/11/15)

 今回は翻訳書ドミノの第15回。「保身をはかる人々のせいで主人公の命が危険にさらされる」つながりで『セプテンバー・ラプソディ』へ。今回はちょっとだけネタバレ気味かもです。前回の『超音速漂流』では高額の保険料を支払いたくない保険会社と航空会社の担当者が主人公の乗った飛行機をいっそ墜落させようと画策しましたが、『セプテンバー・ラプソディ』では企業のオーナー経営者が創業者の名声を守るために私立探偵のヴィクの調査を妨害しようとします。



 本書はサラ・パレツキーによるV(ヴィク)・I・ウォーショースキー・シリーズの最新刊。
 ヴィクのシリーズというと、スタート当初は特に3F小説(作者・主人公・読者がそろって女性)の代表として有名だった印象があります。日本でも人気のシリーズですが、わたしは20年ぐらい前に読んだとき、どうもピンとこなくてその後追いかけてきませんでした。
 なんでこんなひさしぶりに読む気になったかというと、こちらの記事を読んだのが大きかったかと思います。「シリーズ初期に比べると、ヴィクってとっても自然体になった気がする。当初の肩肘張ってた感じがなくなって、経験と自信に裏打ちされた余裕が出てきた」という大矢さんのコメントに、それなら読んでみようかなと。前にピンとこなかったのはたぶんシリーズ初期のヴィクの「肩肘張った感じ」がわたしには魅力的じゃなかったせいだったんですよね。
 そして……50代に入ったらしいヴィクは確かに余裕が感じられてすてきでした。ヴィクを囲む人々やヴィクのことも正直ほとんど忘れていましたが、そんなわたしでも本作は大いに楽しめました。単独作品としてもしっかり成立している作品です。

 キーワードはノーベル賞、原爆開発、水爆実験、コンピュータ開発、ナチのユダヤ人迫害、女性物理学者といったところでしょうか。ユダヤ系移民の親子4代にわたる物語でもあります。その意味でケイト・モートンの『忘れられた花園』を思い出すような雰囲気もあり。また現在と1930年代から40年代を行ったり来たりする構成が、ブロックマンのトラブルシューターズ・シリーズの初期作品(第二次世界大戦中のエピソードが平行して描かれる)と似ているところもあり。女性探偵もののファンではなくても引きこまれる作品だと思いました。

 山本やよいさんの訳者あとがきによれば、シリーズ10作目の『ビター・メモリー』が本書と似ているとか。こちらも読みたいという気持ちになりました。

 そうそう、本作には著者による「歴史メモ」がついていて、本書に登場するウィーン放射能研究所(IRF)やマルティナ・ザギノールのモデルとなったマリエッタ・ブラウという物理学者についての詳しい情報が盛りこまれている点がとてもよかったです。20世紀初頭のIRFは女性科学者を積極的に登用するユニークな組織だったとか。「あの時代に!」と驚きました。


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プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
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