FC2ブログ

01

31

コメント

カール・ハイアセン『復讐はお好き?』(田村義進訳・文春文庫)

(2023/1/31)

 数日前に美容院に行ったとき、担当の美容師さんに「年末年始はゆっくりされましたか?」と訊かれました。そしたら、一カ月もたっていないのに、年末年始をどう過ごしたかすぐには思い出せない自分にびっくり……。なんかそんなにあれこれしているわけでもないのですが、数週間前がはるか昔に感じられる一月末です。

 今年最初の読了本はカール・ハイアセン『復讐はお好き?』(田村義進訳・文春文庫)。持っていた本の奥付を見ると2010年8刷となっているので、いつの間にか10年以上積んでいたようです。前から本棚を見ては「ああ、積んでしまっているな……」と意識はしていたけれど、10年超えだったとは。

IMG_1941.jpeg

 550ページほどあり、遅読且つ読書時間があまり取れなかったわたしは2週間ほどかかりましたが、おもしろかったです! 速い人なら、あっという間に読み切ってしまうでしょう。
 解説には「とにかく楽しくスピーディなミステリ」「キャラ立ち」「痛快な物語」「スマートな語り口」「最低の敵役に最高の脇役」、そして「これまでにはなかった泣かせる挿話と、ちょっとしたロマンスまで加えられている」という言葉が並びます。この作品をおもしろいと思った方はジャナ・デリオンの『ワニの町へ来たスパイ』シリーズが気に入る確率が高そうと感じました。

IMG_1944.jpeg

 いっぽう、カール・ハイアセンは男性、ジャナ・デリオンは女性だし、原書の刊行年も10年ほど離れているので、男女のキャラ設定の細かいところで違いを感じもしました。これはどちらがいいとか悪いとかではなく、“生きのいい女性”といっても、男性作家が描く場合と女性作家が描く場合で若干の傾向のようなものってあるよなという話です。最近はジェンダーをめぐる意識が大きく変わってきているので、今後エンタメ小説で描かれる男性像・女性像もさらにどんどん変わっていくのだろうなあと思います。
 2014年(すでに10年近くたっている!)に『ワニの町へ来たスパイ』の原書 Lousiana Longshot のリーディングをしたとき、男性読者にはあまり支持されないかもと思いました。アイダ・ベルたちが「男ってもんは……」という感じの発言をしたり、フェミニズム小説的な側面があったりすることは、シリーズの大きな魅力ですし、コミカルに描写されている部分がほとんどなんですけれど。
 1巻刊行当初も現在も、シリーズファンの方々(aka 「ワニ町応援団」もしくは「ワニ町メイト」)は女性が多いかと思います。ただ、シリーズが邦訳刊行打ち切りの危機に見舞われた際、強力に応援してくださった方のなかには男性もいらしたし、このごろTwitterなどで感想をアップしてくださる方のなかには男性も増えてきていているような気がします。読んでいただければ、性別や年齢に関係なく楽しんでいただけるシリーズなんだなあと実感し、訳者としては嬉しいかぎりです。

 カール・ハイアセンの作品は最近は邦訳刊行が止まってしまっているようです。過去にハイアセン作品を楽しみ、また「とにかく楽しい」「痛快な」ミステリが読みたいと思っている方には、ぜひワニ町を試してみていただきたいです。そしてワニ町6巻の邦訳刊行前に「余裕のあるユーモア」や「過激なコメディ」が楽しみたくなった方は、『復讐はお好き?』、お薦めです。わたしの推しキャラは病気療養中の高齢女性、モーリーンと、ちょっとおばかなわんこ(ドーベルマン)のストラムです。

 今回は2023年最初のブログ更新でした。ことしもゆるゆるとおつき合いいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします♪♫♬(と書くと、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のロッキーになった気分w)

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

*32*

Designed by

Ad