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読者と作品のマッチングは重要

(2022/10/31)

「読者と作品のマッチングは重要です。一般論として、すごくいい作品でも、読者が別のものを期待して読むと良さが伝わらない。『月の影』が出たころはファンタジーブームで、そういう(剣と魔法の)ファンタジーがもっと読みたい!と思って『月の影』を読むと、まず間違いなくガッカリしたと思います」
「求められていたかどうかはともかく、人間は甘いものばっかり食べているとしょっぱいものも食べたくなる、ってことなんじゃないかな。他のファンタジーと毛色が違ったのがよかったのかな、とは思いますね」

(『十二国記 30周年記念ガイドブック』p.133より)



 『十二国記 30周年記念ガイドブック』インタビュー記事にあった小野不由美さんの言葉です。“毛色が違った”本を、おもしろいと思ってくれる読者さんに届けることのむずかしさを日ごろ強く感じているので、引用部分の前後も含めて、いろいろと考えながら読みました。


 
 わたしが翻訳を担当している通称ワニ町シリーズの第5巻『どこまでも食いついて』(ジャナ・デリオン/東京創元社)が先日、おかげさまで無事に刊行されました。ワニ町シリーズは翻訳ミステリとしてかなり“毛色が違った”部類に入るかと思います。3巻で邦訳刊行終了の危機に見舞われながらも、本当に多岐にわたるおおぜいの方からびっくりするような応援をいただいて、シリーズ続刊が決まったのが二年前。発売になってまもない5巻も好評のようでほっとしています。現時点で版権が取得されている6巻だけでなく、7巻以降もきちんと読者のみなさんにお届けできるよう、版元の判断が下されるといいなと思います。

 以前わたしが翻訳を担当した『ペナンブラ氏の24時間書店』(ロビン・スローン/東京創元社)も毛色の変わったところがあり、ストライクゾーンの読者さんにはすごく楽しんでもらえる作品でありながら、そういう読者さんに見つけてもらうのがむずかしいという悩みがありました。幸い解説を書いてくださった米光一成さん、文筆家の仲俣暁生さん、そして書店主の内沼晋太郎さんがイベントを開催したり、メディアで紹介してくださったりして、多くの方に手に取っていただけたようです。ただ「もっと知られていい」という声もあり、イベントでは「書店でどのコーナーに置くべきか」みたいな議論がされたりもしました。

 読者と作品のマッチング、うまくできればいいけれど、本当にむずかしい……と思っていらっしゃる方、出版関係者にも、読者さんにも、きっといっぱいいらっしゃるはず。
 小野不由美さんもおっしゃってるように、「人間は甘いものばっかり食べているとしょっぱいものも食べたくなる」。読書についても、いつもと違うものを読み、change of pace してみたくなることってあると思います。そうしたとき、“毛色の違った”おもしろい作品と出会えれば、またさらに本を読みたくなるかもしれない(甘いものとしょっぱいものを交互に食べていると、エンドレスに食が進む(^^;)のと同じように)。本当にたくさんの本が刊行されているいま、“毛色の違った”おもしろい作品、自分のストライクゾーンの作品って、実は刊行されているはずなんです。ただ出会えていないだけ、出会えないうちに本/シリーズが消えていってしまうというケースが少なくなさそう。
 ワニ町5巻の発売に合わせて、Twitterでその辺のことを少しつぶやいてみました。よければ、お読みになってみてください。#続編翻訳希望 のタグも検索していただくと、読者さんのレスポンスなどご覧いただけます。あと、このマッチングの問題に関連して、もう七年も前ですが『インターネット的』(糸井重里・PHP文庫)を読んだときのことを思い出しました。そのときのことについてはこちらの記事に少しまとめてありますので、こちらもよろしければお読みください。

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 先日、洋書ファンクラブを主宰されている渡辺由佳里さんのYouTube番組「わくわく文学トーク」で、渡辺さんとお話させていただきました。ワニ町の話、シリーズ刊行のむずかしさについても話していますので、よろしければご覧ください。渡辺さんと原著者との交流、アメリカにおける出版傾向の変化などのお話は必聴です。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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