FC2ブログ

04

16

コメント

『労働者階級の反乱〜地べたから見た英国EU離脱〜』ブレイディみかこ(光文社)

 ブレイディみかこさんの『労働者階級の反乱〜地べたから見た英国EU離脱』(光文社)を読みました。結果、ブレグジットに持っていた印象がずいぶんと変わりました。英国の労働者の考え方、彼らがどんな人たちなのかが立体的に浮かびあがってくる本なので、ブレグジットや政治にあまり興味がない方でも、読んでとてもおもしろいと思います。



 先日、英国のボリス・ジョンソン首相が新型肺炎から生還したあとのビデオメッセージで、NHS(国民保険サービス)の医師・看護師をはじめとしたスタッフ(清掃員やほかの方々も含めていたところがよかった)に力のこもった感謝の言葉を述べていましたが、本書を読むとNHSが英国民にとってどのような存在かがよくわかります。

「病とは、人が金銭を払ってする贅沢ではないし、金銭を払って償わねばならない罪でもない。それは共同体がコストを負担すべき災難である」というのは、NHSを創設した労働党内閣の大臣ベヴァンの言葉で、現在でもNHS発足の理念として、英国の子どもたちに学校で教えられているのだそうです。NHSは英国の人々にとって「『王室と並んでこの国を代表するもの』と公言して憚らない」存在とのこと。「明確に社会主義的なヘルスケア制度」とブレイディみかこさんは説明しています。

 本書で特におもしろかったのが「第Ⅱ部 労働者階級とはどんな人たちなのか」でブレイディみかこさんがみずからの友人6人に対して行ったインタビューなんですが、そのうちのひとりローラさん(仮名)は元NHSの看護師。彼女はがん患者のカウンセリングもできる立場にあったとのことで、かなり優秀な職員だったと思われます。そんな彼女の移民の同僚に対する複雑な思いを読んで、ものごとは一面的/表面的な見方だけではだめだということをあらためて痛感しました。

 昨年、映画の〈エセルとアーネスト〉(原作はレイモンド・ブリッグズ)を観たんですが、本書を先に読んでいればもっと細かなところに気づいたり、深く理解できたりしたかなと思いました。昔観た〈GO NOW〉や〈フル・モンティ〉についても同じことが言えそうです。第Ⅱ部に登場するスティーヴさん——離脱に賛成したいっぽうで、近所のティーンに嫌がらせをされていた中国人労働者を守るために見まわりパトロールなどをする“近所のおっさん連のリーダー格”——なんて、そのままああした映画に出てきそう。
 そんなわけでここに挙げたような作品がお好きな方は特に相性のよい本かと思います。


↑〈エセルとアーネスト〉


↑〈GO NOW〉


↑〈フル・モンティ〉

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

QRコード

QR

*32*

Designed by

Ad