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『ねじまき片思い』

(2018/08/18)

 ことしはできるだけ日本人作家の本を読もうと思っています。子どものころから海外小説が好きだったせいか、ほうっておくと日本の作家は「読んだことのない人がほとんど」状態になってしまうんですよね。まあ、とにかく遅読なもので、海外作家も「読んだことのない人がほとんど」だったりするんですが……。

 さて、そんなこともあって『ねじまき片思い』を読んでみました。わたしにとっては初柚木麻子作品。表紙もかわいいし、内容紹介がおもしろそうだったので。



 おもちゃ会社の敏腕プランナー宝子(たからこ)がトラブルという名のちょっとしたミステリを各章でひとつずつ解決していく仕立てになっています。

目次
第一話 スカイツリーを君と
第二話 三社祭でまちあわせ
第三話 花やしきでもう一度
第四話 花火大会で恋泥棒
第五話 あなたもカーニバル

 宝子の勤める会社が浅草にあるという設定なので、目次を見てわかるように下町観光をしているような気分を味わえるのも本書の魅力のひとつ。
 登場人物がカラフルでおもしろかったです。ミステリ部分(特にその解決方法)がかなり現実離れしているのに対し、人物描写・内面描写はリアル。この塩梅、わたしは好きでした。宝子が当初ルームシェアをしていた友人、玲奈がレズビアンという設定も自然でよかった。

 カラフルな登場人物のひとりが、スリの老婦人、弓子。なんとこの女性、浅草紅団シニアという高齢者スリ集団を束ねているんですが、威勢がよくてかっこいい。ジャナ・デリオン作品に登場するアイダ・ベルを思い出しました。アイダ・ベルがお好きな方はきっと弓子が、弓子が好きな方はきっとアイダ・ベルが気に入ると思います。

 ジャナ・デリオンの『ワニの町へ来たスパイ』の訳出に取りかかった際、アイダ・ベルにどんな話し方をさせようかとちょっと迷いました。そんなとき、ふと頭に浮かんだのがNHKの朝ドラ〈とと姉ちゃん〉で秋野暢子が演じたこの女性。下町のきっぷのいいおばあちゃんのしゃべり方はアイダ・ベルにぴったりでは——そう考えたとたん、自分のなかでイメージが固まって、使う言葉が決めやすく、リズムもととのえやすくなったのを覚えています。実を言うと〈とと姉ちゃん〉はときどき観ていただけだったので、あくまでわたしが観たなかでのまつさんのイメージなんですけどね。朝ドラの登場人物が翻訳のキャラ設定の参考になるなんて……人生って、どこで何がつながるかわかりません(笑)。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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