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ゲド戦記

(2017/05/31)

 今年最初の読了本はゲド戦記3『さいはての島へ』で、今年最初の当ブログの記事はそれについてでした。そこに「(シリーズ読了までに)このあと3年もかからないよう祈ります」なんて書いてましたが、自分事なのに祈ってちゃだめだろう!ということで、4〜6巻も読みおえました。やっぱり、おもしろかった〜! 今回はシリーズの訳者あとがきや本文から心に残った部分を数カ所引用させていただこうと思います。







 6巻『アースシーの風』の訳者あとがきに清水真砂子さんは次のように書いていらっしゃいます。

ロークの学院に象徴される知の世界も、この作品の中ではかつてないほど相対化され、その威光はもはや失せようとしています。それに代わるものは何なのか。答えはすでに早くから、ゲドやテナーのことばや暮らしぶりにうかがえはしないでしょうか。そしてまた『外伝』の短篇に描かれる人々の中に。

 ここで清水さんが書かれている「答え」とも関連してくると思うのが、わたしが『アースシーの風』で一番感動した次の場面というか文章です。

 テナーはハンノキの手をなでた。繊細で、熟練した修繕屋の手だった。テナーの目に涙があふれそうになった。

 涙、溢れました……「繊細で、熟練した修繕屋の手」。
 同じく落涙したのが、5『ドラゴンフライ アースシーの五つの物語』のなかの「地の骨」のラストです。これはゲドの師匠オジオンの若き日の物語でもあるのですが、オジオンがそのまた師匠のダルスと力を合わせ、ゴント島に大きな被害をもたらしかねない地震に立ち向かいます。日本の民話にもあるタイプの話ですが、わたしはこういう話に弱いんだなあ。ラストシーンでオジオンが新たな生活を始め、その場所がのちにゲドやテナーとの、そして彼らとテハヌーとの暮らしの場所になっていったんだなと思うと感動が押し寄せてきました。

 最後に、このシリーズの再読(日本語では初読)を始めたときにドキドキした1巻冒頭の清水さんの訳を引用させていただきます。

 たえまない嵐に見舞われる東北の海に、ひとつだけ頭を突き出す海抜千六百メートルほどの山がある。この島の名はゴント。そして、このゴント島こそは数多くの魔法使いを生んだ地として古来名高い島である。その深い山ふところの村々から、あるいはまた、暗い色をたたえた狭い入江の港町から、遠く旅立っていったゴント人はその数を知らず。魔法使いや学者として多島海諸地域の領主たちに仕えた者たちもあれば、旅のまじない師として人びとに魔法を施すなどしながら、アースシーの島々を冒険を求めて経めぐり歩く者たちもあった。そうした中で、最も誉れ高く、事実、他の追随をついに許さなかった者がハイタカと呼ばれた男である。ハイタカは老いを待たずに“竜王”と“大賢人”の、ふたつながらの名誉をかちえ、その一生は『ゲドの武勲(いさおし)』をはじめ、数々の歌になって、今日もうたいつがれている。だが、これから語るのは、まだその名を知られず、歌にもうたわれなかった頃のこの男の物語である。

 清水さんについてはかつて〈婦人之友〉に掲載されたという記事の内容にネットで触れ、「すごい……」と唸ってしまいました。それについても、もし機会があったら書きたいと思います。


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*おもしろかった記事*〈アジア人は私だけ~米大学留学記〉

(2017/05/24)

 ここ数日、PCのブラウザのブックマークやリーディングリストをちょこちょこ整理・削除していました。あとで参考になりそうなサイトをとりあえずマーク、あとで読みたい記事をとりあえずリストに加える——なんてやっていたら、このごろ未読の記事がどんどんたまってしまい、ブックマークも余計なのがあるせいで必要なサイトが見つけにくくなっていたのでした。そういうことってありません? みなさん、定期的に整理していらっしゃるのかな?
 なんかチェックや整理にも時間がかかるので、これからは「このブックマークは本当に必要か?」「この記事ほんとに読む?」ともう少し考えてから登録しようと思いました。仕事に役立つ可能性がちょっとでもあるとむずかしいんですけどね〜。これも根が貧乏性だからだろうか(苦笑)。

 さて、きょうはそんな作業をしているあいだに読み返したおもしろい記事をご紹介します。これはたしか知り合いの方がTwitterでRTしてらしたのですが、すでにお読みの方もいらっしゃるかな?

アジア人は私だけ~米大学留学記

 ジョージア州アトランタにあるスペルマン大学(Spelman College)という女子大に留学した宮城県出身の女子大生(女子の大学生というだけでなく、日本でも女子大に通っている学生さん)渡邊知彩杜さんの手記。スペルマン大学はあのアリス・ウォーカーも学んだという黒人大学(黒人大学についての詳細は記事を読んでね)で、渡邊さんは政治学とテロリズムを勉強しているそうです。

 渡邊さんがスペルマン大学を選んだ理由のひとつは、日本でつねにマジョリティでありつづけてきた——日本社会で日本人であるという意味——自分が黒人コミュニティの中でマイノリティになったら、何を感じるのか?という点に興味があったからだそう。

 全6回の連載記事です。わたしが特におもしろいと思ったのは第4回〈最初から「分かり合える」のはなぜ?〉。「そもそもほぼ全員が黒人女性であるスペルマンでは、誰も性別を気にしないし、誰も人種を問題にしません。人種によってなんとなくグループが分かれるということは当然ながらありませんし、序列ができることも、レッテル張りされることもありません」「「女性であり黒人である」という二重のフィルターを介して学生が集まっているからこそ、差別や偏見に足を引っ張られることなく、ひとりの人間としての真の力を思う存分伸ばすことができるのではないでしょうか」——こういう考察に興味を惹かれた方はぜひ読んでみてください。あ、読むときは第1回から。そのほうが黒人大学というスペルマンの特殊性がわかると思うので。

 第5回〈ファッションも音楽も大好き!  ブラックカルチャーとの出会い〉は勉強以外のキャンパスライフについて書かれていて、ほかの回と違った楽しさのある記事です。紹介されている写真を見ると確かにおしゃれな学生さん多そう!

 多様性、マジョリティ/マイノリティ、ホームとなるコミュニティなどについて、人種や性別以外のことでも興味のある人には考えるヒントやきっかけを与えてくれる記事です。わたしはそこここで立ち止まりながら読みましたが、読ませる文章なので、読むのが早い方はすぐ読めちゃうと思います。



 

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『シャーロットのおくりもの』

(2017/05/13)

 新緑が美しい季節になりましたね。梅雨入り前の5月は、わたしが1年で一番好きな時期かもしれません。とか言いつつ、きょうはかなり強い雨でしたが。
 今年は若葉を見て「生き生きしてきれいだな〜」と思うと同時に、「ああ、でもちょっと頼りなげ」なんて感じたり。これも年のせいでしょうか(笑)。

 さて拙訳『ジョージと秘密のメリッサ』の発売から5カ月がたちました。Twitterなどで拝見していると、主人公ジョージの親友ケリーがいい!という方のほかに、お兄ちゃんのスコットって意外といいやつじゃん!という感想の読者さんもいらして、スコット大ファンの訳者としては嬉しいかぎりです。個人的には、かつてジョージと仲のよかったリックも「本に描かれていない部分ではどんな子なのかな」となかなか想像力を刺激されるキャラクターでした。

 『ジョージと秘密のメリッサ』では、ジョージたち4年生がE・B・ホワイトの『シャーロットのおくりもの』の劇を学校で上演することになります。アメリカの小学校では読書の時間の課題書として超定番らしく、ほとんどの人が内容を知っている作品のようです。日本における『ごんぎつね』や『手ぶくろを買いに』みたいな感じでしょうか。そんなわけで、『ジョージと秘密のメリッサ』の原書は、読者が『シャーロットのおくりもの』のあらすじやキャラクターを熟知していることを前提に書かれたような部分がありました。そういうところは日本の読者にはわかりにくいのではということで、邦訳に際しては著者アレックス・ジーノから許可を得て、原文にはない補足説明的な文章を入れてあります。



 『シャーロットのおくりもの』は二度映画化され、1973年にアニメーション版が、2006年に実写版がそれぞれ公開されています。2006年のダコタ・ファニング出演作はご覧になった方も多いでしょうか? わたしは1973年のアニメ版が原作に忠実そうだったので、こちらを観ました。シャーロットの声は昨年末に亡くなってしまいましたが、デビー・レイノルズ——キャリー・フィッシャーのお母さんですよ。



 わたしは『ジョージと秘密のメリッサ』の原書を知るまで『シャーロットのおくりもの』を読んだことがなかったのですが、ものすごく感動しました。昆虫系(蜘蛛は昆虫じゃないですけど)が苦手な方も大丈夫です! 大の虫苦手人間のわたくしが保証します。ウィルバーも単なる頼りないブタじゃありません。最後は大人でも——いや、大人なればこそ?——涙なしには読めない作品です。日本ではあすなろ書房からさくまゆみこさんの訳で刊行されていますので、未読の方はぜひ!

*E・B・ホワイトの作品については以前にこんな記事を書いていました。


プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
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Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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