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ドラァグクイーンとゲイボーイ

(2016/10/21)

 前回の〈キンキーブーツ〉の記事のときに「ドラァグクイーン」という表記を使いました。これは来日公演ウェブサイトの表記そのままなのですが、drag queen の日本語というかカタカナ表記は「ドラァグクイーン」が定着してきた感じでしょうか。

 もう4年前になりますが、スーザン・ブロックマンの Into the Storm という本を訳した際(邦題は『凍てつく夜のささやき』)、drag queen が(登場人物としてではなく、話題として)出てきて、表記を悩んだ記憶があるんですよね。「ドラッグクイーン」「ドラグクイーン」「ドラァグクイーン」——どれにするか。「ドラッグ〜」は麻薬を連想させるし、「ドラァグ〜」は日本語表記として慣れない感じがあったので、結局「ドラグクイーン」を選んだんですけど、その後、LGBT(という言葉もその頃はいまほど日常的に見かけなかった)に関心のありそうな方たちが「ドラァグクイーン」という表記を使っているのを見て、あー、こちらにすればよかったと思ったのも憶えています。

〈すばる〉8月号の「特集LGBT——海の向こうから」を読んでいたら、性社会・文化史研究者の三橋順子さんのインタビューに「ゲイボーイというのは、当時は女装をした男性のことを指しました。いまのゲイということばと、八〇年代までのゲイとでは意味のズレがあるんです」という文章があって、はっとしました。
 ゲイ=同性愛者という感覚に慣れてひさしかったので、ゲイという言葉に「女装」やそのほかの意味やイメージが含まれていた時代があったことをすっかり忘れていたいたからです。
 WHOの国際疾病分類が改訂された(トランスジェンダーが精神疾患でなくなった)ことにともなって、「性同一性障害という病名も国際的には消えることになります」とのこと。

 LGBT関連では今後も呼び方や言葉の意味するところが変化していきそう。ぼんやりしたイメージしか持たない人も多いはずで、訳文や文章を書く際にまだまだ迷うことが多いかもと思います。


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〈キンキーブーツ〉と〈ソング・オブ・ラホール〉

(2016/10/15)

 先日、来日版のミュージカル〈キンキーブーツ〉を観てきました。楽しかった! ドラァグクイーンがメインキャラクターのひとりで、親子の心のすれ違いなども描かれ、内容的には楽しいばかりではないんですけど。
 楽曲は——わたしと同世代の方は特によくご存じのはずの——シンディ・ローパーによる全曲書き下ろし。ドラァグクイーンのローラ役、J・ハリソン・ジーの歌唱がとにかくパワフルでした。
 ラストのファッションショーの場面、歌い踊るローラのウィッグがリズミカルに揺れるのに合わせて、こちらもどんどん心が浮き立ってきました。
 最後は立ちあがって踊っているお客さんが多かったです。


(↑ファッションショー場面の動画。ローラのウィッグのふわふわぶりにご注目)

 来日ミュージカル公演や外国人ミュージシャンのコンサートなどに行くと、途中で必ずと言っていいほど「ああ、いいなあ」とすごく幸せな気分になる瞬間があります。
 もちろん日本人の舞台やライブなどでも感動したり、口角あがりまくって帰ってきたりするんですが、来日公演のときに感じる幸せ感は一種独特。その理由はなんだろう?と考えてみると、ステージ上と客席側で、育ってきたバックグラウンドが明らかに大きく異なる人たちが同じ時間と空間を共有し、さらに楽しんでいるという構図がわたしは好きなのだと思います。

 先月観た映画〈ソング・オブ・ラホール〉がすごく気に入ったのも、似たような理由からという気がします。ウィントン・マルサリス率いるニューヨークのビッグバンドと、パキスタンで迫害を受けていた伝統音楽家たちが結成した〈サッチャル・ジャズ・アンサンブル〉の、異なる国・異なるジャンルの人々が交流し、ひとつのステージを作りあげていく様子がわたしにとってはツボだったんです。

 バックグランドが違うということは、ほぼ確実に相容れない部分があるはずです。でも、芸術やエンターテインメントを通じては、同じものをいいと感じたり、共感できたりすることもある。来日公演はわたしにとってそれを強く実感できる場なんだと思います。


プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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