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翻訳書ドミノ 第10回

(2015/03/31)

 きょうは翻訳書ドミノの第10回。カバーイラストが松尾たいこさんつながりでジョー・ウォルトンの『図書室の魔法』へ。
 図書館でも借りられる本を「買って手元に置きたい」と思ってもらうには、やっぱりカバーの力って大きいなと感じるきょうこのごろです。

図書室の魔法 上 (創元SF文庫)図書室の魔法 上 (創元SF文庫)
(2014/04/28)
ジョー・ウォルトン

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 『図書室の魔法』はヒューゴ-賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞を受賞した作品。SFファンを中心に読まれているのだろうけれど、読みはじめてからわたしが雰囲気が似ていると感じたのは『サースキの笛がきこえる』だった。そして読了してみると、最初に感じた以上にYA(ヤングアダルト)色の強い作品だった。

サースキの笛がきこえるサースキの笛がきこえる
(2012/06/05)
エロイーズ・マッグロウ

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 主人公モリの前に現れるウィムなんて、若い女性読者にかなりアピールしそうなキャラだ。あ、若くない読者も魅力的だと感じましたけどね。
 本書は巻末に堺三保さんによる解説が収録されているのだけど、このYA要素と関連する部分で、堺さんが本書の解釈について2種類の可能性を提示していらっしゃる。わたしはモリの日記の記述をそのまま「○○ない」派です。

 主人公のモリ(モルウェナ)はSFマニアの読書家。そんなわけで本書にはSF作品のタイトルがばんばん出てくる。わたしはそのほとんどを読んでいなかったので、ある読書会後の懇親会で本書のことが話題にのぼったとき、SFをたくさん読んでいる方に「出てくる本を読んでないのにおもしろかったですか?」と不思議がられた。
 はい、おもしろかったです(笑)。その理由はこれだなと思うことを、堺さんが解説で指摘していらっしゃるので、その部分を引用させていただきます。

 上手にネタバレを最小限に抑えつつ、感想を書いているあたりは、作者の配慮なのであろうが、これがまた実に好ましい。言及されている作品を読んだことがある場合はもちろん、未読の場合も、ついにやにやしながらモリの歯に衣着せぬ感想を楽しんでしまう。

 読書会の場面では主人公が司会者の進行の上手下手を冷静に分析していたりするのもおもしろかった。マニアだけが集まる読書会って、わたし自身は経験がないんですけどね。

 上下巻だけど、さして長くないし、するする読める。カバーもかわいいから、YAが好きな読者さんにも読まれてるだろうか。読まれているといいなあと思います。

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トラブルシューターズ・シリーズ最新刊

(2015/03/24)

 先日、こちらの記事にもちらっと書きましたロマンティック・サスペンス『薔薇のウェディング』が刊行されました。NEW YORK TIMES BESTSELLING AUTHORなスーザン・ブロックマンによるトラブルシューターズ・シリーズの第12巻です。

薔薇のウェディング (ヴィレッジブックス F フ 5-22)薔薇のウェディング (ヴィレッジブックス F フ 5-22)
(2015/03/20)
スーザン・ブロックマン

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 3月9日にスーザン・ブロックマンが“Soon I'll be attending wedding of my amazing son @JasonTGaffney to the man of his dreams.(わたしのすばらしい息子ジェイソンと彼の夢の男性との結婚式に出席することになりました) ”とツイートしていました。その直後にはこんな写真つきツイートも。
 ブロックマンのファンの方はすでにご存じのとおり、彼女の息子はゲイで、ブロックマンはLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の権利を守る運動に熱心に参加しています。
 『薔薇のウェディング』はシリーズを通じて登場するキャラクターとして日本でも人気のゲイのFBI捜査官、ジュールズ・キャシディがついに恋人のロビンと婚約、結婚する巻です。この本の日本での刊行がブロックマンの息子の婚約というハッピーな出来事とタイミングが重なったことを知って、わたしはとても嬉しくなりました。

 トラブルシューターズ・シリーズは米海軍SEALを舞台としてスタート。このシリーズの翻訳に、わたしはテレビドラマで言うなら第2シーズンの開幕とも言える『熱い風の廃墟』から参加し、本作がシリーズ4作目の翻訳担当となります。
 本作にも感動的な著者あとがきが載っていますが、わたしの翻訳担当2作目『ホット・ターゲット』にはブロックマンが息子への思いを綴ったまえがきがついていました。お読みになった方でこのまえがきに涙した方、少なくないのではないでしょうか。

ホット・ターゲット 上 (ヴィレッジブックス)ホット・ターゲット 上 (ヴィレッジブックス)
(2010/06/19)
スーザン ・ブロックマン

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(↑ジュールズとロビンが出会う巻でもあります)

 なんて書くと、LGBTの問題がメインのすごく真面目な作品みたいに思われるかもしれませんね。ブロックマンの文章は基本ノリノリな感じで、シリーズ全体としてはヒーロー×ヒロインのロマンスがメインになっています。

 わたし自身について言えば、BLや同性愛を扱った作品を特にジャンルとして好んでいるわけではありません。でも、本書で主役を張るジュールズ・キャシディにはシリーズを通して惹かれてきました。ジュールズと出会ったことをきっかけに同性愛をめぐる問題や現状に対する興味が増したと言ってもいいくらいです。
 わたしはこういう変化を自分のなかに起こしてくれる作品が好きです。そして今回『薔薇のウェディング』の翻訳を担当できたことをとても嬉しく感じています。
 本書がひとりでも多くの読者のみなさんに楽しんでいただければ幸いです(拙訳を読んでほしくないと思っていたころとはたいへんな変わりっぷりだ(笑))

潮風に殺意が漂う 上 (ヴィレッジブックス)潮風に殺意が漂う 上 (ヴィレッジブックス)
(2014/06/20)
スーザン・ブロックマン

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(↑ジュールズとロビンの関係が2度目にサブプロットとしてフィーチャーされた作品。『薔薇のウェディング』の前日譚になります。ジュールズファンになったら必読の書。翻訳は阿尾正子さん)


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『インターネット的』から

(2015/03/18)

(最初にアップした記事に手を加えました3/19)
 少し前に糸井重里さんの『インターネット的』を読みました。もともとは2001年に新書として出版されたものが10年以上たって文庫化され、いまの社会をとても的確に言い当てているため、“予言の書”なんて言われて話題になっている本です。

インターネット的 PHP文庫インターネット的 PHP文庫
(2014/11/21)
糸井 重里

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 「なるほど」「うん、うん」という箇所がいっぱいあって、わたしはKindle版にハイライトしまくりでした。そこできょうはそのハイライトの一部を箇条書きでご紹介します。
 昨年、翻訳ノンフィクションの『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生みだせるか』『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する』を読んだのですが、この2冊に通じる部分があるというか、糸井さんのほうが早く見抜いていたのではと感じる部分もあって、あらためてすごい人だなと思いました。

・化け物のように大量に売れるひとつかふたつの勝った商品と、無数の負けた商品という市場のパターンが、当たり前になってきています。
・勢いだけが価値であり勝ちであるような状況では、勢いのあるものが加速度的に売り上げを伸ばしていきますが、そうでないものは自然にチャートから脱落していきます。(中略)みんながどんどん忙しくなっている時代なので、趨勢として、チャートが一〇位までは注目して見るけれど、五〇位くらいのものはあまり見ないでしょう。ところが、力は、そういう順位のところに隠れているものなのです。
・答えの出にくい問題をしつこく考えないのが、「勢いが価値」という時代の特徴に思えるのです。
・実際の人間たちは、答えのない問題についてしゃべったり考えたりする場を求めていたのではないでしょうか。
・基本的な市場の動きは、ヒマな人がつくります。(中略)仕事をしている人は、時間に貧乏しているのですから、時間にリッチな人々の後をついていくしかないのですね。

・広告のプロとしてはちょっと悲しいのですが、「売れてます!」という商品コピーが、いまは一番強力でしょう。
・「売れているから」という理由で買うことに疑問を感じている人々は、おそらくたくさんいます。そういう人は、自分の価値観と、世間の価値観とがちがうということにある種のあきらめを持っていたのかもしれません。
・急に大金を手にした人がみんな超高価なスポーツカーを買うのも、それ以外に思いつきようがないという「欲望の貧困」かもしれません。
・食うに困らないようになったといわれる現代のほうが、楽しみとか、豊かさということについては、一番ビンボーくさいような気がします。
・これからの時代、大量生産・大量消費型でやっていくことは、相当困難になってきます。

・自分でもよくやることなのですが、「ひとつのものを肯定したり賞賛したりするために、他のものを並列的に例にひいて、そちらを否定する」ということが、ぼくが言っている「消費のクリエイティブ」を、育ちにくくしているのではないか。
・相対的な評価軸を持つと、何でも言えてしまうので、とても便利なんです。
・いいと思ったものを、他と比べないで誉める練習というのをやってみるというのは、どうでしょう。けっこう、難しいのですが、自分の肥料になるような気がするのです。
・人は好きなものやおもしろいものに即座に飛びつくわけではないですし、勢いに任せて手に入れたものは、飽きて手放すのも早いものです。
・「ああ、やっぱり、これがいいな」ときちんと自覚して選ぶもの。そういうものをぼくは自分の好みとしても信じますし、できればそういうふうに人々のなかに染み込んでいきたいと思います。

 わ、一部とか言って、20箇所以上になってた。(*追記したので↓をお読み下さい3/19)

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映画〈プロデューサーズ〉

(2015/03/13)

 2005年のミュージカル映画〈プロデューサーズ〉が期間限定で上映されていたので観てきました。
 主演のネイサン・レインとマシュー・ブロデリックは映画のもとになった2001年のブロードウェイ・ミュージカルでも主役を務めたふたり。
 このミュージカル、そもそも1968年のメル・ブルックス映画がオリジナル。わたしはメル・ブルックス作品を観たことがないのだけど、キーワードを書き出すと、ヒトラー、ゲイ、きわどさ、下ネタ、あたりになるだろうか。女性蔑視や移民蔑視になりかねないぎりぎりの表現で笑いをとりにいっている感じ。おばかコメディなんだけど、お気楽じゃない。わたしの好みとは言えないものの、風刺の入れ方のあんばいがうまく、メル・ブルックスに対して興味が湧きました。今回の映画の監督は2001年の舞台と同じくスーザン・ストローマンなんですけどね。
 ミュージカルとしては映画よりも舞台で観たほうが数倍よさそう。

 今回の映画版にはスウェーデン人のセクシー女優ウーラ役でウマ・サーマンが出ているのだけど、ダンス・シーンで「ん?」と思ったら、やはりそこだけ舞台版でウーラを演じた女優さんによる吹き替えだったとのこと。
 ミュージカルの映画化は、ダンスや歌をどうするかがむずかしいですよね。
 わたしは小学生のころ〈サウンド・オブ・ミュージック〉をテレビで観ていたく感動し、ジュリー・アンドリュースのファンになったのだけど、そのとき姉から〈マイ・フェア・レディ〉のキャスティングにまつわるゴタゴタを聞いたせいで、わたしのなかでオードリー・ヘップバーンは長らく「ちゃんと歌も歌えないのにジュリー・アンドリュースから〈マイ・フェア・レディ〉の主役を奪った人」としてイメージが定着することになりました……。オードリー自身は歌を一生懸命に練習し、自分の歌声が使われると信じていたのにね。
 〈ウェスト・サイド・ストーリー〉のマリア役、ナタリー・ウッドも撮影に自分の歌が吹き替えになると知らされて激怒したとか。

 〈プロデューサーズ〉で落ち目プロデューサーのマックス・ビアトリックを演じたネイサン・レインは、1992年版ブロードウェイ・ミュージカル〈ガイズ・アンド・ドールズ〉で(映画ではシナトラが演じた)ネイサン・デトロイト役を演じた人。そんなこともあって、ここのところ〈ガイズ・アンド・ドールズ〉のサントラがひさしぶりにヘビロテ気味です。あー、秋からのヅカ版〈ガイズ・アンド・ドールズ〉が楽しみ!

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「小説の歓び〜書く、訳す、読む〜アリス・マンローをめぐって」

(2015/03/06)

 2月28日にB&Bで開催された「小説の歓び〜書く、訳す、読む〜アリス・マンローをめぐって」に行ってきました。マンローを訳していらっしゃる小竹由美子さんと文芸評論家の加藤典洋さんの対談です。

善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)善き女の愛 (新潮クレスト・ブックス)
(2014/12/22)
アリス マンロー

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 えー、実はわたし『善き女の愛』が初マンロー。そのうえ当日までには表題作と「ジャカルタ」しか読了できず、ちゃんとお話についていけるかなと不安を抱いてました。純文の書店イベントというのも初体験だったし。
 ところが! 会場に何度も笑いが起きる楽しいイベントでした。
 今回わたしがこのイベントに申しこんだのは、ふだん四国在住の小竹さんがいらっしゃるから。マンローがノーベル賞を受賞したあとだったかな、小竹さんが参加されるイベントが東京で開かれたことがあったのだけど、わたしは都合がつかず参加できなかった。参加した人が口をそろえて「おもしろかったよ~」と言っていたので残念に思っていたのです。
 小竹さんはとてもパワフルでとても頭の回転の速い方でした。加藤さんは大学で教えていらしたころなど、きっときびしい先生だったのだろうけれど、イベント当日はくつろいだというかくだけた雰囲気でお話なさっていた。ちょっと淀川長治風の語り口で、わたしはまずそこで親しみを感じてしまった。

 質疑応答の時間があったら小竹さんに訊きたいなと思っていたのが「マンローを訳す楽しみ、訳しがいがあると感じられるのはどんなところか」だった。そうしたら、お訊きする前に小竹さんから「(マンローの作品は)原書で読んだときと訳したあとで印象が変わるところがおもしろい」とお話があった。「曖昧さがあって読者はたいへん」とも。わたしがお話をうかがっていていいなと思ったのは「貧しく、教養のない人を描くときに上から目線じゃない」というところ。
 加藤さんからは「心のしわが深い」「視界が広く、焦点深度が深い」といったお話があった。
 マンローの作品は読む側の年齢や過去にどんな経験をしているかによって大きく解釈が変わってくる。わたしが今回初マンローでへええと思ったのは、表題作「善き女の愛」がミステリ的に読んでもおもしろそうな短篇だったこと。イベントでは未読の参加者さんもいらしたので、この作品にかぎらず「本を薦めるときにネタバレはありかなしか」をめぐって盛りあがったりもした。
 ミステリファンで「善き女の愛」を未読という方がいらしたら、ぜひ読んでみることをおすすめします。きっと読んだ者同士で語り合いたくなりますよ。あれは事故だったのか、事件だったのか? 主要登場人物のうち女ふたりの言っていることはどこまで(どれが?)本当なのか? あのあと男はどういう行動をとったのか? 「真相はこれだ!」という結論は出ないだろうけれど、幾通りもの可能性が飛び出して、解釈の違いを楽しめると思う。

 そういえば、マンロー自身が好きな作家はフラナリー・オコナーやカーソン・マッカラーズなのだとか。わたしが大学1年のときに授業の課題になってピンとこなかった南部女性作家たちだ(苦笑)。こちらに書いたマンスフィールドじゃないけれど、いま読み直せばおもしろさがわかるかなあ。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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