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ロマンス・オフ会

(2014/6/27)
 先日、こちらのサイト主催のロマンス・オフ会にお邪魔してきました。
 わたしが参加するのは今回で3回目。最初に参加したのは、一昨年アメリカ在住の文筆家・翻訳家・洋書コンシェルジュの渡辺由佳里さんが日本にいらしたとき、洋書ファンのオフ会でロマンス小説好きの方々と知り合ったのがきっかけでした。

 ことしの1月とある集まりで、同業者さんから「ねえねえ、ロマオフ、参加したことあるんでしょ? 勇気ある~。わたしも興味はあるんだけど……」というような感じで声をかけられました。そう、最初は勇気が要りました! オフ会にいらっしゃる読者さんは特に読書量もハンパじゃないはずだし、原書も読んでいるファンの方は(ジャンルに関係なく)翻訳者からするとキンチョーする存在でもあり、何かとへなちょこなわたしが出ていくのはまずいのではないかと……。ただ、洋書オフ会でお会いしたのがとても楽しい方たちだったので、せっかくのお誘いを無駄にするのはもったいないなと思いきったのでした。

 今回の会場はTホテル。8人で優雅にアフタヌーンティーをいただきながら、本・ドラマ・舞台・旅行などのお話がゆっくりできてとっても楽しかったです。あ、人数はそのときどきのようで、わたしが最初に参加したときは12名ぐらい、2回目は関西の有名なロマンス読者さんが東京に遠征されたときだったので20名ぐらいでした。
「けさ届いたばかり」というパラノーマル・ロマンスのハードカバーを持っていらした方、二次創作をしているという方もいれば、「わたしがいいなと思う作品はあまり売れない……(涙)」という“翻訳ロマンス界のピーター・バラカンさん”のような方がいたり。あ、話がそれますけど、ピーターさん、昔仲のいいミュージシャンに「おまえが気に入った曲は売れないんだよな~。なに、この曲気に入った? ちょっと変えようかな」と真顔で言われたことがあるそうな(笑)。

 それにしても、本は人によって好みも読み方もまちまちですね! 同じ作品について話していても、本人同士が「あれ? 同じ本の話をしてるとは思えない」と笑うくらい、読むときの着眼点、切り口が異なっていたり。
 このオフ会はロマンス小説に詳しい翻訳者さんがメンバーにいらっしゃるので、訳語についてのお話、そこから原書読みさんが原書と翻訳書を読んだときの印象の違いなどのお話などもうかがえて、わたしにとってはとても充実した会でした。
 翻訳については、各ジャンル、出版社、ひいては担当編集者によってこだわりポイントが異なったりするのでなかなかむずかしい部分もあるんですけど、こういう会でうかがった声も今後の訳文に少しなりとも反映できればなあと思います。

 あ、今回はテメレア・シリーズのファンの読者さんもいらしてテメレア&ローレンスの話ができたのも個人的に嬉しかったです。
 

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15

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ドストエフスキーと愛に生きる

(2014/06/15)
ドストエフスキーと愛に生きる

 1923年キエフ生まれのロシア語→ドイツ語翻訳者、スヴェトラーナ・ガイヤーさんの晩年を追ったドキュメンタリー。渋谷アップリンクの上映最終日になんとか観ることができました。上映回数は減っても4カ月近く上映してくれたアップリンク、すばらしいわ。

〈スヴェトラーナさん略歴〉
 スターリンの粛正により父を失ったのち、ドイツ軍占領下のキエフで語学の才能を生かし通訳として働く。1943年、ドイツ軍の撤退を機に母親とドルトムントへ移り、その後はドイツ在住。
 第二次大戦後に比較言語学を学び、1957年ごろからロシア文学のドイツ語翻訳を始めると同時に大学で教壇に立った。2010年に死去。享年87歳。

 冒頭で印象的だったのはスヴェトラーナさんの声の若さ、きちんとアイロンのかかった白いシャツ。彼女がアイロンかけをする場面に移って「textile」と「text」の語源が同じという話になるんだけど、「洗濯された織物は方向性を失う。だから、(アイロンをかけて)糸の方向をもう一度整えてやる」という考え方がユニーク。
 アイロンがけだけでなく、スヴェトラーナさんの暮らしぶりは衣食住のどれについても丁寧。パンフレットでは「食」の部分がクローズアップされていたけれど、玄関ホールにとても自然にきれいな花が飾られていたりして、住まいも居心地よさそうだった。

 翻訳に関しては訳稿をタイプで打ってくれる女性、読み合わせをしてくれる男性(編集者?)との共同作業の部分がカメラにおさめられていておもしろかった。男性が提案した変更についてスヴェトラーナさんが無言で考えこんでいると、男性「わかりました! 降参だ。このままで」、スヴェトラーナさん「あとでひとりで考えてみます」といったようなやりとりが交わされたり。

 翻訳の話をしているときのスヴェトラーナさんの表情には自信と誇りが表れているというか、強さが感じられた。それが第二次世界大戦中の話になると、変わる。
 パンフレットで『ダ・ヴィンチ』編集長の関口靖彦さんは「彼女は、本作で自分の過去のすべてを言葉にしてはいない」と書き、ロシア文学者の亀山郁夫さんは「(ゲシュタポの将校ケルシェンブロック)伯爵との間には、何かしら語るに語りえない謎が潜んでいるような印象を与える」と指摘している。それを強く感じたのが戦時の経験について語る彼女の表情だった。何か罪悪感を抱いているような、怯えともとれるような表情だったと思う。
 映画を観終わったあと、彼女がどんな経験をしたのか少し思いめぐらしたりもしたけれど、あの表情を見ると語られなかった真実を穿鑿したいとは感じなかった。数奇な運命を乗り越えて生き延びた、精神的にも強いはずの人がああいう表情になってしまう経験だったんだなとわかるだけで充分というか。

 この作品、DVD化されるだろうか。DVDでもう一度観てみたい。

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翻訳書ドミノ 第5回

(2014/06/10)
 また少し間が空きましたが、今回は翻訳書ドミノの第5回。前回の『貧乏お嬢さま、古書店へ行く』から“貧乏なヒロインがスパイにスカウトされる”つながりでこちらの本について書きたいと思います。

バグダッドの秘密

バグダッドの秘密 (クリスティー文庫)バグダッドの秘密 (クリスティー文庫)
(2012/08/01)
アガサ・クリスティー、中村 妙子 他

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 貧乏お嬢さまのシリーズを読んでいる途中、雰囲気が似てると思い出されたのがこの『バグダッドの秘密』でした。わたしは昔から冒険ミステリ的な要素が強い作品が好きだったので、本書はたしか中学生のころに読んだのですが、とても楽しく読んだ記憶がありました。
 今回、30年以上ぶり(?)に再読してみたましたが、バグダッドにいるダキン氏とクロスビー大佐が謎めいたやりとりを交わし、アメリカの銀行に勤める有能な頭取秘書アンナ・シェーレがロンドンで姿をくらます冒頭はほんとに読者を引きこむのがうまいなあと感じました。詳しい内容はほとんど憶えていなかったくせに(苦笑)懐かしさを覚えたり。
 お金がないヒロインが裕福な女性のお供として異郷へ行き、冒険をするというストーリーには、大人になってもわくわくさせられました。物語の舞台は1950年代ですから、ロンドン→バグダッド直行便などなく、ヒロインのヴィクトリアたちは途中カイロに寄ります。そこでヴィクトリアはバグダッドまでの雇い主、ミセス・クリップのはからいでピラミッド見学ツアーに参加できることになるんですけど、そういうささやかなエピソードもうらやましいなあと感じたりしました。
 すっかり忘れていたのが主人公ヴィクトリアの性格。お転婆なタイプという印象しかなかったのですが、公園で一度会ったきりのハンサムな男性がいるからという理由でバグダッド行きを決めてしまうあたり、なかなか無鉄砲な“必要もないのに事件に飛びこんでいく”型ヒロインです。わたしは今回再読してもあまり気になりませんでしたが、大人になってから初めてこの作品を読むと、人によっては彼女の言動に抵抗を感じるかもと思いました。 
 中村妙子氏による訳者あとがきに“政治的、国際的な問題を扱うときのクリスティーは、柄でもないことをやっているという気がちょっとしないこともないが、『バグダッドの秘密』にはエンタテインメントの要素がたっぷりあって”とあるとおり、本書はまさにエンタテインメント作品。楽しそうに書いているクリスティの文章に乗って、あまり細かいことは考えずに読むのが吉と思います。とはいえ「ああ、やっぱりクリスティ」と感じる辛口の人間観察に、はっとさせられる部分もあったりするんですけどね。

 翻訳書ドミノ、つぎは初めて短篇集につなげようかなと思っています。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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