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本という時限爆弾

(2014/04/29)
 先日、キャサリン・マンスフィールドの“The Garden Party”に29年ぶりに挑戦してみた話を書きましたが、その記事を書いた時に頭にあったのが1月に朝日新聞のウェブサイトに掲載された間室道子さんのこちらの記事。
 “合い言葉は「受けて立つ!」”が楽しいですよね! 最初に読んだときはこのフレーズが気に入って心に残っていたんですが、「過去に諦めたけど気になってた本に再度挑戦」しようという部分もちゃんと潜在意識にすり込まれていたのかもしれません。だから、“The Garden Party”のオーディオブックを聴いてみる気になったのかも。

 この記事によると、本が最後まで読み通せなくて悩む人って多いみたいですね。
 わたしは「読み通せない」というより、無理して読み通して、結局その作品はおもしろく思えないし、時間を浪費したような徒労感を覚えたことがわりとあったなあ。最近はやめられる場合はやめることにしてます。
 途中で止まってる本、再挑戦する日は来るでしょうか。29年もかからないようにしないと、時間切れになってしまうかも???

 世の中はゴールデンウィーク突入なようですが、わたしは相変わらずカレンダーとはあまり関係のない生活です。連休明けが〆切の仕事が遅れ気味(汗)。ガンバラナケレバ。

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リグニン???

(2014/04/22)
 予約が始まったあと、このブログの新刊のコーナーに登録してありました『ペナンブラ氏の24時間書店』、おかげさまで紙の本と電子書籍と両方発売になりました。
 きょうはこの本を訳すに当たって困った調べものについて書きたいと思います――って、調べもの困ったエピソードは前にも書いてましたね。いつの間にかシリーズ化。

Later, after an hour of late-night isolation and lignin inhalation have sobered me up, I do two things.

 ↑これは主人公のクレイ・ジャノンが勤める不思議な24時間書店に、若い女性客キャット・ポテンテが訪ねてきた直後の場面。キャットはグーグルの社員で、クレイが自作したコンピュータ・プログラムのバグを見つけ、あっという間に解決してくれました。彼女が帰ったあと、ポーッとしていたクレイ(キャットはとてもユニークでチャーミングなんです)はやっと気持ちが落ち着き、行動に移ります。なんの行動かはぜひ本書でご確認を(笑)。
 さて、ここでわたしがわからなかったのは“lignin”。辞書には「リグニン、木質素」などとあります。“inhalation”は「吸入」だから、何か軽い精神安定剤みたいなものを吸入したのかなあなどと想像しました(クレイのキャラじゃないんですけどね)。でも、ググってもリグニンに関する化学的な説明が見つかるばかりだったので、ほかの疑問点と一緒にネイティブスピーカーに尋ねてみました。すると「うーん、わからないなあ」という反応。「一種の精神安定剤の可能性はある?」と訊いたところ、「あるかもしれないね」という返事でした。とりあえず、説明はつけず、「リグニン」とカタカナにしただけの状態で訳稿は納品しました。
 本書の校正に入る前に、わたしは原著者のロビン・スローンに確認したいことがひとつありました。訳文自体には影響なかったんですけどね――って、それなら、確認しなくたっていーじゃん! なんですが、それはまあ置いといて(苦笑)。ligninについてはその際、著者に直接メールで質問してみました。すると次のような返事が。

The smell of books comes largely from lignin; it's in the paper! More info here: http://blogs.smithsonianmag.com/smartnews/2013/06/that-old-book-smell-is-a-mix-of-grass-and-vanilla/

ロビン・スローンが教えてくれたリンク先にあったのは次のような説明――“Lignin, which is present in all wood-based paper, is closely related to vanillin. As it breaks down, the lignin grants old books that faint vanilla scent.”
 要するにリグニンはバニリン(バニラの香りのもと)と構造が近似していて、紙の中に存在する物質で、それが分解するにつれ、古書はバニラっぽいにおいがするようになるってわけなんですね。なるほど! 確かに古書ってちょっと甘い香りがする気が。納得! つまり原文で著者が書いているのは「クレイは書店に漂う本のにおいをかいでいるうちに気持ちが落ち着いてきた」ってことだったんです。
 しかし、これはこのスミソニアン博物館の記事を読んでないとピンと来ない人多いんでは……とか思ったんですが、どうなんでしょう。辞書の“lignin”の項に「木材パルプ中の不純物」という説明はあったので、わかる人にはすぐわかることなのかなあ……ダトシタラ、シツモンシテシマッタワタシノタチバハ……。
 ともあれ、調べもの困った→人頼みシリーズ、「同級生に助けてもらいました」「ネイティブに助けてもらいました」に続き、「原著者に助けてもらいました」篇でした。

 本書についてはまた書くことがあるかもしれませんが、きょうはこの辺で~。

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スカイエマさんの装画、裏表紙も必見です!

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松岡享子さんのインタビュー記事から

 〈考える人〉48号の特集は「海外児童文学ふたたび」。松岡享子さんや谷川俊太郎さんのインタビューが載っています。

考える人 2014年 05月号 [雑誌]考える人 2014年 05月号 [雑誌]
(2014/04/04)
考える人

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 リクエストが多い流行の本を公立図書館が何十冊も入れることに関連して、松岡さんがイギリスの図書館の話を紹介していらっしゃいました。

 市民の要求に応えることは大事です。けれども、バランスをとることも必要ですね。以前に、イギリスの児童図書館員のアイリーン・コルウェルさんがおっしゃっていたのですが、イギリスである子供向けシリーズが大流行したことがあったそうです。図書館の選定基準には満たない作品だったけれども、リクエストが多いので購入しないわけにはいかなかった。コルウェルさんは、最低部数いれることにしたそうですが、あっというまに借りられる。そこで借りに来た親や子どもには「残念! 今貸し出し中だわ。かわりに、これはどうかしら?」と他の本を勧めるようにしたというのです。

 学校で流行ってる本がある。まだ読んでない子が友達の話についていきたくて、その本を借りに図書館に行く。別に本は嫌いじゃないけど、特に好きでもなく、今回の目当ては流行の本だけ。そんな子が聞いたこともないタイトルの本を差し出されて、「この本、おもしろいのかなあ? このおばさん、信じられるかなあ?」と考えながらその本をじっと見つめてる。
 なんて光景を想像してしまいました。いや、差し出された本をじっと見つめて悩むのはある程度本好きの子ですかね。松岡さんのお話はさらに続きます。

「図書館ではそんな本は置きません」などと言えば、読みたいと思った読者は、自分を否定されたように感じてしまうだろう。その子の要求を認めた上で、「他にもおもしろい本があるのよ」と、上手に勧めて、質のいい本への道をうけるのが児童図書館員のやり甲斐でしょう、と話しておられました。

 この「相手を否定せずに」という部分、子どもに限らず大事だよなと思いました。ひとから否定されなければ、あとで「ほかの本も読んでみたら、あの本はたいしたことなかったかも」と自分で気がつく可能性もあるし。否定されちゃうと変な意地が生まれてしまう気がします――ってそれは私の場合?(笑)

 谷川さんのインタビューでは『100万回生きたねこ』について「普通だったらハッピーエンドと言わない、不思議なハッピーエンドです。あの作品が200万部も売れたのは、日本人の感性を信用する一つの源になるように思います」と語られているのが印象的でした。
 あと、「ピーナッツ」の著者、シュルツさんについて「もの静かで哲学者のようでした」と振り返っていらっしゃる部分も。昨年の『スヌーピー展』に行って、シュルツさんて思ったより陽気な人だったのかな?と少しイメージが変わった部分もあったのですが、実際にお会いすると哲学者みたいだったのか~。

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The Garden Party を聴いてみた

(2014/04/10)
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 オーディオブックでKatherine MansfieldのThe Garden Partyを聴いてみました。

 この作品、大学1年の講読の授業で取りあげられたのだけど、当時は少しもおもしろいと思えなかった。でも、ずっと心の隅っこに引っかかっていて、朗読だとなんとたった36分だというので聴いてみたんです。そうしたら……。
 ええー、こんな話だったっけ? どうして、これをおもしろいと思わなかったんだろう? と、驚きました。
 ガーデン・パーティの準備の様子が描かれていて、主人公は10代の女の子という記憶ぐらいしか残っていなかったんですが、花などの情景描写が美しいし、主人公(ローラ)の心の動きが繊細で、大学1年生で読むのにぴったりの作品。いや、若いころ読むのにぴったりと思うのは、自分がいまの年齢になったからかもしれないけれど。
 授業の際、この作品をおもしろいと思えなかった理由ははっきりしています。わたしの英語力が圧倒的に不足していたんですね-。浪人中に予備校で仲よくなった友達に英語好きの人が多くて、なんとなく英語が得意科目になったものの、わたしは大学に入るまで英語で話した経験がゼロと言ってよかった。ところが、The Garden Partyが課題になった講読は英語で行われる授業のひとつで、わたしにとっては最初、本当にきつかったんです。
 課題も「もっと有名な作品がいいなあ」なんて思ってました。キャサリン・マンスフィールドの「園遊会」は充分有名な作品だって!(苦笑)
 今回、再トライしてみて、先生がすてきな作品を選んでくださっていたことにやっと気がつきました。29年(!!)もたって。とほほ~。

 キャサリン・マンスフィールド、もっと聴いてみたい、と思い、こちらのオーディオブックを買ってみました。しかし、前知識のまったくない短篇は話が追いづらいようなので、Kindle版Collected Short Stories by Katherine Mansfieldも購入。どちらも1ドルしませんでした。
 こういう「やり直し○○」みたいなことをしたくなるのって、年齢のせいもあったりするんでしょうか?

 ところで、わたしが世話人のひとりをしている東東京読書会の第6回が5月10(土)に開催されます。詳しくはこちらをご覧になって下さい。課題書はキャロル・オコンネルの『クリスマスに少女は還る』。これはごくごく個人的な感想ですが、ロバート・マキャモンの少年時代〈上〉 (ヴィレッジブックス)などが好きな人は楽しめるんじゃないかな~。ミステリの枠にとどまらない作品です。世話人3人は完全なるボランティア。ご興味おありの方はお申し込みくださいませ。残席わずかとなっています。

 あ、トップの画像は先日、皇居乾通りの一般公開に行ったときのもの。今年は紅葉シーズンも公開されるそうです。

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翻訳書ドミノ 第4回

(2014/04/04)
 今日は翻訳書ドミノの第4回。前回はチャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)について書いたので、今回は“古書店”つながりでこちらの本!↓

貧乏お嬢さま、古書店へ行く (コージーブックス)貧乏お嬢さま、古書店へ行く (コージーブックス)
(2013/11/08)
リース ボウエン

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 リース・ボウエンの貧乏お嬢さまシリーズの第2巻――と書いていていま気づいたけれど、こちら、正しいシリーズ名は「英国王妃の事件ファイル」なんですね。
 さて、この本についてわたしが一番言いたいのは「リース・ボウエン、ずるい!!」です。だって、1巻で悪い咳をしていたおじいちゃんが2巻になったらとっても元気なんだもの! 少なくとも咳が止まらない様子はなし。ま、この展開、なんとなく予想はしてましたけどね(笑)。
 このシリーズの主人公は王家の血を引く公爵家令嬢なれど、家が傾いてしまってお金に困っているジョージアナ(ジョージー)。母親が市井の出で、母方のおじいちゃんはもちろん庶民。元警察官です。このおじいちゃんがもうラブリーで。

「気管支炎だとさ。空気中の煤煙と冬の霧がよくないんだ。海辺に保養に出かけるのがいいと先生はのたまう」(中略)「いいか、保養には金がかかるんだよ。わしはいま、すごく裕福とは言えんからな」(中略)「(年金は)雀の涙低度さ。勤続年数が足りないのだ。ちょっとした喧嘩に巻き込まれて、頭を棍棒で殴られ、それからめまいがするようになって警察をやめた」(『貧乏お嬢さま、メイドになる』より)

 そんなおじいちゃんが、おなかを空かせている公爵令嬢の孫娘のためになけなしの卵を使って、料理を作ってくれるんです。「ジョージー、早くお金持ちになって、おじいちゃんを海辺の保養地に連れていってあげて!」という気持ちになります。
 1巻と2巻のあいだに保養地に行ったわけではないと思いますが(苦笑)、咳はおさまった様子のおじいちゃんが2巻ではかわいい孫娘のためにひと肌脱いでくれて出番も増え、おじいちゃんファンとしては大満足の内容でした。
 ジョージーももちろん魅力的なキャラクターです。本書で「大戦で脚を失いました」と書かれた札を置いている物乞いを見かけると、“胸がいっぱいに”なった彼女が1シリング(現在の物価に換算すると1000円ぐらい?)を置いてくる場面があるんですが、読んでいるこちらも胸がいっぱいになりました。なんて書くと優等生っぽい印象になっちゃうかな。公爵令嬢なのにメイドとして働いてお金を稼ごうとする人ですからね、基本はユーモアセンスのあるおきゃんなキャラです。

 もう、このシリーズは何かと低空飛行のときでも楽しませてくれる、わたしにとっては気分回復剤のようなシリーズです。3巻が初夏に発売とのことなので楽しみに待ちたいと思います。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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