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蝶々殺人事件

(2014/3/29)
 先日、舞台の『蝶々殺人事件』を観てきました。
 原作は横溝正史の同名小説。↓
蝶々殺人事件 (角川文庫)蝶々殺人事件 (角川文庫)
(2012/10/01)
横溝 正史

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 金田一ものではなく、元刑事の探偵、由利麟太郎が活躍するシリーズの第一作です。
「原さくら歌劇団の主宰者である原さくらが「蝶々夫人」の大阪公演を前に突然、姿を消した……。数日後、数多くの艶聞をまきちらし文字どおりプリマドンナとして君臨していたさくらの死体はバラと砂と共にコントラバスの中から発見された! 次々とおこる殺人事件にはどんな秘密が……」(Amazonの紹介文一部コピペ)という内容。時代設定は第二次世界大戦前の昭和初期。
 横溝正史というと、市川崑監督、石坂浩二主演の一連の映画を中学生のころテレビで楽しんだものの、それで満足してしまっていました。今回、舞台の予習に原作を初めて読んだのですが、いや、さすがに謎解きがよくできていておもしろかったです。怪奇色のない由利シリーズのほうがわたしは好みかも。子供時代にルパンものが好きで、いまでも「変装」と聞くとワクワクするタイプとしては、本書はトリックのひとつに変装が絡んでいて、そこも好みでした。

 舞台は休憩なしで2時間弱。わたしたちが観にいった日は1日2回公演の日だったせいで疲れていたのか、前半は台詞がカミカミになっている役者さんもいました。長台詞が多かったし、若い役者さんが中心だったからかな。後半はみんな演技が乗ってきた感じで、安心して観ていられました。
 今回はミュージカル俳優として有名な岡幸二郎さんがストレートプレイに出演している点にも興味を持っていたんですけど、さすがベテラン。舞台に重みを出していました。

「(犯人が)ああいう人間だったとしても、相手がちがっていたら、殺人なんかやらなかったろうし、女史がああいう人物であっても、相手が違っていたら殺されなかったろう。つまり鐘と撞木(しゅもく)のあいが鳴るというわけで、鐘と撞木は別々にあっても鳴らなかったにちがいない」

 今回、原作はKindleで読みました。引用した部分はわたしがハイライトした箇所。ひと言で言ってしまえば「相性」ということになるんでしょうけれど、殺人にまで至らない場合でもこういうことってあるよなあと、現実の生活に引き寄せて感じました。ミステリを読んでいても、こういう人間洞察に関する部分が心に残ったりします。

 今回の脚本は複雑なプロットをうまく省略してわかりやすくしていました。ただ、推理小説にあまりなじみがない演劇ファンで、原作を読んでいなかった方にはちょっと謎解きがわかりにくいところがあったかも。ミステリファンは原作を知らない人でもOKだったと思いますが。舞台では最後に原作にはない犯人の告白場面が設けられ、上の引用の部分を強調していた感があったんですけど、そうすることで、人間ドラマとしてまとまりをつけていた印象がありました。

 今回は同業者のKさんが東京にいらしたのでご一緒し、舞台の前後にゆっくりめにお話をうかがえたのも楽しかったです。

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24

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ラファエル前派展

 六本木ヒルズで行われているラファエル前派展に行ってきました。

2014-03-24 ラファエル


 10年ほど前(?)上野にミレイの「オフィーリア」が来たときは、それはもうたいへんな混み方だったので、今度もどうなることかと心配しましたが、絵画展としては適度な混み具合で、どの作品も比較的ゆっくり楽しめました。

 今回わたしが好きだなと思ったのはバーン=ジョーンズの「『愛』に導かれる巡礼」。バーン=ジョーンズの作品は一昨年も三菱一号館美術館で見ましたが、彼が描く神秘的な情景に惹かれます。ミレイの「マリアナ」も気に入りました。実物は画像よりもずっと青が鮮やかで印象的です。

 それにしても、ロセッティってばイケメン(笑)。そしてラファエル前派兄弟団の複雑な男女関係には思わず口があんぐり。
 このフィクション顔負けのぐちゃぐちゃさは映画に向いてそう……と思い、ググってみたらBBCでドラマ化されてました。↓
Desperate Romantics/SEXとアートと美しき男たち[PAL][英字幕のみ]Desperate Romantics/SEXとアートと美しき男たち[PAL][英字幕のみ]
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エイダン・ターナー、サミュエル・バーネット 他

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 なんかおもしろそう――すでにご覧になった方いらっしゃるかしら。

 今回、展示作品数自体は多くないので、ゆっくり見ても1時間強~1時間半でまわれると思います。充実の展示内容ですし、ミレイの「オフィーリア」やロセッティの「プロセルピナ」がこんなに落ち着いて見られるのは貴重な機会かと。4月6日までです。

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眠らない男 ナポレオン

 少し――いや、かなり前になりますが、宝塚の星組公演〈眠らない男 ナポレオン〉を観てきました。

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 宝塚を観にいくようになったのはここ数年。贔屓のスターさんなどはいないので、演目に興味があったら観にいくという感じです。
 星組の公演をナマで観るのは今回が初めて。前から「他の組と人気度が違う?」と感じていましたが、いや、なんか劇場内というか観客の熱気が違いました。
 ゆるいファンでもなんとなくわかったのは、組全体としての歌のうまさ。今回は作曲がフランス発の大ヒットミュージカル〈ロミオ&ジュリエット〉のジェラール・プレスギュルヴィックで、楽曲がよかったこともあると思いますが、脇役にいたるまで歌に迫力がありました。特に印象に残ったのはナポレオンの義理の息子、ウジェーヌ役の礼真琴さん。

 パンフレットを読むと、東京に先んじて行われる大劇場公演は2014年1月開幕だったのに、2013年11月の制作発表の時点で楽曲の半分が整理がつかず、脚本とのすりあわせができていなかったとか。ひえええ。素人からすると、元日に初日の幕が開いたのは奇跡と感じてしまいます。演出の小池修一郎さんは「何より柚希礼音率いる星組のチーム・ワークの良さ、体当たりの大胆不敵さの賜物である」と書いておられました。
 宝塚はことし創立100周年。制作や運営にはもちろん男性もかかわっているわけですが、出演者はみんな女性。80名ほどの組子を実際にまとめあげているのはトップさんなのか組長さんなのか? 宝塚については女性のリーダーシップという点でもこのごろ興味を惹かれます。適度に体育会がはいってるところがいいんでしょうか?

 つぎは花組トップ、蘭寿とむさんの引退公演〈ラストタイクーン ハリウッドの帝王、不滅の愛〉を観にいく予定です。
 それにしても、大学時代までは正直、宝塚は苦手で、数年前からちょこちょこ観るようになってからも「ちょっと妖しい世界」と感じていたはずなのに、このごろその感覚がとっぱらわれてきた気が(苦笑)。ま、なにごともゆるいわたしのことなので、ハマるところまではいかないと思いますけど。
 あ、でも、まだ宝塚をナマで体験したことない方には、一度は足を運んでみることをお勧めします。別世界ぶりが楽しいですよ! 2020年の東京オリンピックでは、開会式か閉会式に宝塚のショウを取り入れてほしいと切に願っています。外国の選手、観客もきっと「おおっ!」となるはず。

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〈ダディ・ロング・レッグズ〉

 〈ダディ・ロング・レッグズ〉@シアタークリエ、観てきました。
 2012年9月に日本初演、好評のあまりその4カ月後にアンコール上演がされたという人気ミュージカル。派手さとは無縁だけど、本当によかった。こんなに感動するとは――というわけで、わたしとしては異例の速さでレポを書きました。

 原作は言わずと知れた『足ながおじさん』。ジルーシャ・アボットを坂本真綾、ジャーヴィス・ペンドルトンを井上芳雄が演じて、最初から最後までふたりが出ずっぱりのふたりしか登場しないミュージカル。
 セットはずっとジャーヴィスの書斎とジルーシャの部屋(段差をつけてうまく区切っている)。書斎の壁いっぱいの本棚の向こうに、時に女子大の庭、時にふたりが一緒に過ごす田園の風景が透けて見えるしかけ。
 今回、こんなに楽しめたのは、第一にジルーシャ役の坂本さんの演技がよかったからだと思う。「すばらしい」とかいう言葉も使いたくないほど自然に、すーっと、観客にジルーシャとして認めさせてしまうというか。『足ながおじさん』は子供のころ好きだった作品なので、イメージを壊されたら嫌だなという気持ちがあった。でも、わりとストライクゾーンが狭いタイプのわたしでも、坂本さんのジルーシャはほんとに冒頭から好きになれた。彼女をキャスティングした人、すごいと思う。
 井上王子のジャーヴィスはちょっとだけ気むずかしそうなところを見せつつ、かっこよかったり、ヘタレだったり、人間味たっぷり。ジャーヴィスは30~32歳くらいの設定で、王子はいま34歳とのこと(さっきTwitterで教えていただいた)なので、年齢的にもちょうどいい感じ。
 坂本さん、わたしは舞台を観るのも歌を聴くのも今回が初めてだったんだけど、伸びやかな歌声で、聴いていて気持ちよかった。井上王子の歌は、もう当然ながら安心しきって身をまかせられます。

 観客席は95~98%女性(笑)。井上王子のファンの方も多かったろうけれど、このミュージカルの成功の理由は、原作の魅力を損なうことなく舞台化できている点にあると思う。『足ながおじさん』は昔から女の子に人気の小説だものね。
 あ、ただ、公式サイトの動画で脚本・演出のジョン・ケアードが「原作は英米ではさほど知られていない」という衝撃発言をしています。えええええっ。なぜ??? フランスでは人気があるらしいけど……。

 学生時代にゼミでThe Adventures of Huckleberry Finnを1年かけて勉強した身としては、このたびジーン・ウェブスターの大叔父がマーク・トウェインと知ってたいへん驚きました。いや、聞いたことはあったのに、すっかり忘れていたという可能性もあるけど。どちらにしても、情けなや。

 終演後、2度のカーテンコール。2度目はもう会場総立ちでの拍手でした。そして、今週木曜日20日の夜公演(
当初はマチネのみの予定だった)が急遽追加となり、18日(って公演日2日前ですが)から予約開始という発表が井上王子からありました。
 これはもう今後、何度も再上演されること間違いなしの作品。わたしもまた行きたいです。

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翻訳書ドミノ 第3回

 きょうはちょっとあいだが空きましたが、翻訳書ドミノの第3回。前回のナルニア国の父 C・S・ルイスからつなげます。
 C・S・ルイスは50代後半になってからアメリカ人のジョイ・デヴィッドマンと結婚し、ジョイと彼の物語はShadowlands(〈永遠の愛に生きて〉)というタイトルで映画化され、ルイスをアンソニー・ホプキンスが演じました。そこで今回は「映画にアンソニー・ホプキンスが出演した」つながりで、チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)について書きたいと思います。

チャリング・クロス街

 本書はニューヨーク在住の脚本家、ヘレーン・ハンフとロンドンの古書店マークス社をめぐる人々(おもに古参店員のフランク・ドエル)との心温まる往復書簡集です。わたしがこの本と最初に出会ったのは20年ほど前、まだ翻訳のワークショップに参加していたとき。原書の一部が課題になったんですだけど、邦訳を読んでいた人のなかにすごく熱烈なファンがいたのを憶えています。昨年、本書についてTwitter でつぶやいたら、「わたしも好きです!」という返信を何件かいただき、やはりファンが多い本だなと感じました。
 ヘレーン・ハンフとマークス社のあいだで手紙のやりとりが始まったのは1949年。第2次世界大戦が終結してすでに4年の月日が経過しているのに、戦勝国であるイギリスがまだ深刻な物不足に苦しんでいた様子が本書を読むとよくわかります。同じ連合軍側のアメリカとの経済状況の差にあらためて驚かされました。

“ところで、そのブライアンさんのお話ですと、お国では食糧が配給制で、肉は一週間に一世帯当たり六〇グラム足らず、卵は一カ月に一人当て一個なのだそうですね。ほんとうにびっくりしました。ブライアンさんは当地にありますイギリス商社のカタログを持っていらっして、デンマークからイギリスのお母様に食料品を航空便で送らせています。私もマークス社のみなさんにささやかながらクリスマス・プレゼントを送らせていただきます。”(本文p.22)

 本についてのやりとりも面白いんですけど、ヘレーンがときどきプレゼントを贈るようになったあとのマークス社の人々(店員の家族も含む)の喜びぶりや、彼女へすてきなお返しが贈られたことが書かれているくだりを読んでいると、もう自然と笑顔になります。
 読みたい本が電書で瞬時に手に入る現在を便利だと思う反面、「この本に描かれているみたいに思いきりアナログな時代に読書を楽しんでみたかった」なんて気持ちにもなりました。

 そうそう、昨年、濱中利信コレクション「エドワード・ゴーリーの世界」を観にいったとき、パンフレットにすてきなエピソードが載っていました。ゴーリーの作品を集めはじめて間もないころ、ネット検索をしていた濱中さんは、とあるアメリカの古書店のウェブサイトにたどり着き、その後そこのご主人からメールでゴーリーについてさまざまなことを教えていただいたそうです。紙の書簡ではなくEメールでですが、この濱中さんのエピソードを読んだとき、わたしは本書に通じるものを感じました。

 読中読後感がとてもいい本です。わたしは精神的にきつい本と並行して本書を寝る前にちょっとずつ読み、安眠導入書(笑)として利用しました。
 映画はレンタルがないようだったので、廉価版のDVDを買って観ました。フランク(をアンソニー・ホプキンスが演じています)の妻ノーラ役でジュディ・デンチが出演しているんですが、映画版のノーラは原作と違った(少しキツイ性格に)描かれていて、そこがちょっとだけ残念でした。それ以外は原作の雰囲気がよく出ていて、主演のアン・バンクロフトもユーモア溢れるヘレーン役にぴったり。本好きの方には特におすすめです。

 次回は○○○つながりで、昨年刊行されたミステリ作品について書く予定です。

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オーディブル体験記(3)

 さて、今回はオーディブル体験記最終回。おもにメンバーシップについて書きたいと思います。この話題、こんなに引っぱるつもりなかったんですけど(笑)。

*クレジット(Credit)
「クレジット」というのはオーディブルのメンバーシップに入ると毎月もらえるオーディオブック交換券のようなもの。基本は14.95ドル/月の会費で1枚もらえます。ただ最初の1カ月はお試し期間という感じで無料で1枚もらえ、そのあと退会しようとしたら3カ月間7.49ドル/月でのさらなるお試しを勧められました。で、わたしは3カ月のさらなるお試し後、2カ月正会費を支払ったのち退会しようとしたのですが、そうすると「3カ月アカウントをon hold(保留)にできるよ」とまたまた引き留めに会いました。いわば休会ですね。休会中はクレジットがもらえない代わりに会費は引き落とされません。
 メンバーシップにはいっていると、①クレジットを使ってしまったあとでもほかのオーディオブックを定価の30%引きで買える、②The New York Times か The Wall Street Journal のダイジェスト版オーディオブックを平日毎日無料でダウンロードできる、という特典があります。休会中もこのふたつの特典は有効というので――体験記(1)にオーディブルのメンバーシップは2月で退会するつもりと書きましたが――結局退会は先延ばしにしました。

*お得な利用法
 オーディオブックはKindle版に比べると高めのものが多いです。前回紹介したオースターのNY3部作は3作分と考えればそんなに高くないですが、定価だと34.95ドル、会員価格でも24.46ドルです。でも、会員期間中にクレジットを使って買えば(1枚で1オーディオブックと交換できるので)14.95ドル(もしくは7.49ドル、最初の月だったら無料)で買えてしまう計算になります。ですから、高い作品が欲しい人はメンバーシップにはいったほうがお得ということになりますね。
 ただ、古典作品のなかには3ドルぐらいで買えるオーディオブックもあります。ですから、メンバーシップにははいらず、そういう安いものを探して買ってみるという利用方法もあると思います。
 あと、Kindleと同じでときどきセールがあり、エンターテインメント系の有名作品などが4.95ドルぐらいで買えたりするようです。わたしが見たときは会員限定とは書いてなかったので、ときどきこちらをのぞいて、安くなっている作品のなかに興味があるものがあったらそれを買っておくというのもいいかもしれません。

*アカウント
 わたしはキンドル・ペーパーホワイトを購入したあと、しばらくして日米のアマゾン・アカウントを統一しました。そのため、米アマゾンのサービスである(ですよね?)オーディブルを利用できるのか、アカウントはどうなるのかという点が気がかりだったのですが、メンバーシップに申しこもうとしたら、アカウント統一前に米アマゾンを利用していたときのメールアドレスなどのアカウント情報が登録画面に出てきました。そんなわけで、アカウントを統一してしまった人も問題なく利用できるはずです。

 以上、わたしが利用前に気になった点を中心にまとめてみました。もともとがローテク人間なので、すでにオーディブルをお使いの方で「ここ違ってるよ~」などという点がありましたら、お知らせいただけると嬉しいです。

 最後に、メンバーシップとは関係ないですが、オーディブルを利用するようになって感じたのは、オーディオブックも一種のTranslationだなということ。朗読されているのは原文ですが、ナレーターという著者以外の人間があいだに入ってくる点では、他言語への翻訳と同じとはまではいかなくても似たところがあるのではないかと。朗読のしかたにはナレーターの解釈がはいってきますからね(もちろん、著者がナレーターの場合は別です)。
 ただ、だったら紙もしくは電書で原文を読むのがいちばん原作そのままの味わいを楽しめるのかと言うと、日本人のわたしたちの場合は個々の語学力によって大きく違ってくると思います。いまはKindleで洋書のテキストがあっという間にダウンロードでき、人気作品ならオーディオブックも入手できるようになっていて、邦訳が出ている本もたくさんある。それぞれに長所と少しの短所があるので、海外作品に興味がある方は時と場合によって楽しみ方を選ばれるとよいのではとあらためて思いました。


プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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