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翻訳書ドミノ 第1回

 みなさま、新年を迎える準備は進んでいますか? わたしは大掃除がまだほとんどこれから(苦笑)。

 さて、きょうは年内最後の更新です。今回は先月の記事で予告していた《翻訳書ドミノ》の第一回。
 初回は拙訳の『感謝祭は邪魔だらけ』からつなげます。『感謝祭は邪魔だらけ』は主人公のソフィが運悪く二度も死体の発見者になってしまい、警察から容疑者扱いされながらも、感謝祭のお客のもてなしに必要な家事をもりもりこなしていくという内容です。
 解説で書評家の大矢博子さんが書いてくださっているように、感謝祭は家族親戚に加えて友達やご近所さんまで一同に集まることがある、アメリカの家庭にとってはとても大事な年中行事。そこで、やはり一族全員集合的な年中行事、ユダヤ教のローシュ・ハシャナー(新年祭)の様子が描かれている『贖いの日』(フェイ・ケラーマン著/高橋恭美子訳/創元推理文庫)につなげたいと思います。

day of atonement

 『贖いの日』はロス市警の刑事、ピーター・デッカーが主人公のミステリー・シリーズの第4作。シリーズ前半の頂点と言ってもいい傑作です。わたしはこの本のラストシーンで何度涙を流したかわかりません。
 わたしはこのシリーズをどちらかというと普通小説のような気分で読んでいました。最初は特にデッカーと、彼が担当する事件を通して出会ったリナの関係がどう進んでいくのかに興味を惹かれ、また、日本で暮らしているとなじみのない正統派ユダヤ教徒の生活がわかりやすく描かれている点もおもしろかった。この4巻の冒頭で、デッカーとリナのロマンスは結婚という形で一段落し、本書で描かれるのは養子として育ったデッカーと生みの母親との邂逅です。
 この生みの母親が本書の最後にする決断が、なんとも胸に迫るものなのです。彼女が決断をするところや、それを行動に移した場面は描かれていません。でも、ラストシーンを読みながら、その書かれていない場面、そのときの彼女の心境を想像すると……と書いているだけでも涙がこみあげてきます。
 いま本書がふつうに流通していないのはとてもとても残念。版元さんにはこのシリーズの1巻から4巻まではぜひ復刊してほしいなあと、ファンとしては切に願います。
 ふだんミステリーはあまり読まないという人にも、本書は家族小説としての読み応えがあるので強くお薦めします。個人的にはデッカーと、リナの連れ子であるサミーとジェイクの会話がとても好きで、そこも何度も読み返しています。
 お読みになる際はぜひ1巻から! この前の第3作、『豊穣の地』も心を揺さぶられるすばらしい作品です。

 ピーター・デッカー&リナ・ラザラス・シリーズについてはまだまだ書きたいことはいっぱいあります。自分がどうしてこのシリーズにそんなに惹かれたのか、あらためて整理したいという気持ちもあるのだけれど、長くなるのできょうはこのへんで。
 フェイ・ケラーマンについては訳者の高橋恭美子さんが翻訳ミステリーシンジケートのウェブ・サイトに紹介記事を寄稿されているので、そちらもご覧になってください。

 それではみなさま、よいお年を! 

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クリスマスツリー農場

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こちらはスヌーピー展で展示されていたピーナッツ・ツリー


 ブログを始めるとき、週一ぐらいで更新できればと思っていたのだが、気がついたら前記事から2週間たっていた……さすが師走。

 このあいだ、ホームセンターでもみの木を売っていたけれど、日本だとクリスマスツリーとして本物の木を飾ったことがある家庭ってどれくらいいあるのだろうか。
 もう6年前になるがクリスマス・アンソロジー(シュガー&スパイス (ヴィレッジブックス))を訳した際、一篇の舞台がクリスマスツリー農場だった。欧米だとクリスマスツリー専門の農場なんてあるのかと感心しながら訳した。
 ただツリーの出荷作業なんて何も知らないから、さらりと書いてあるところにわからない点がいくつかあり、このときは大学の同級生でアメリカ在住のAJさんに助けてもらった。

 ひとつは"drill the hole in the trunk"。商品として出荷する前にツリーの枝葉を刈り整えたりするのはわかるけれど、幹に穴を開ける? なんのために? これはツリーをスタンドに固定するための穴なんだそうだ。
 同級生も最初悩んだのが、出荷作業に必要なものの代用品として出てくるbarrel。直後には rain drum とも言い換えてあるんだけど、樽や雨水タンクみたいなものの用途って?
 AJさんはいったんメールで「こっちはわからないなあ」という返事をくれたあと、「あ、あれだ!」と気がついたそうでわざわざ電話をくれた。
 登場人物たちが樽/雨水タンクを使ってやろうとしていたのはこちらの作業(ページをちょっとスクロールすると写真があります)。ツリーにネットをかぶせる際、筒状のものに通して枝葉をコンパクトにまとめようとしていたのだ。
 用途などわからなくても訳文には影響はなかったかと思うが、友人のおかげで気分的にすっきりとして訳稿を納品できた。

 その年のクリスマス、NHKのニュースでたしかドイツだったと思うけれど、クリスマス準備の映像が流れ、ドイツのツリー農家でも同じような作業をしているところが映った。あー、これを先に見てたら、あの場面も引っかからずに訳せたかなと思ったものの、きっと一度引っかかったことがあったからこそ、このニュース映像に目が留まったのだろうなとも思った。

 きょうでクリスマスも終わり(というか、日本ではイヴでクリスマス終了な雰囲気ですが)。
 年の瀬で慌ただしいですけど、元気に乗り切れることを祈って!

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柴田元幸さん@葛西図書館

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 12月5日、〈世界文学を愉しもうvol.3〉という柴田元幸さんのトーク&朗読イベントがあったので、葛西図書館に行ってきた。
 このイベント、一年に一度開催していて、ことしで3年目とのこと。定員は50名。どういうご縁で始められたのかな? なんかこぢんまりして居心地のいい会だった。前日にTwitterのMONKEYアカウントのつぶやきで知ったのだけど、前日でも若干空きがあった。図書館側は来年も開催したいとのお話だったので、その際にはぜひまた参加したい。江戸川区民以外も参加できます(わたしも江戸川区民ではありません)。

 当日決めたとおっしゃることしのテーマは“アメリカ”。ヨシフ・ブロツキー、ナサニエル・ホーソーン、アグネス・オーウェンズアイザック・バシェヴィス・シンガーの短篇や絵本、詩を朗読を交えて紹介しつつ、“アメリカ的なこと”“アメリカの理想”などについて語られた。
 わたしはホーソーン以外は知らない作家ばかりだったのけど、どの作品もおもしろかった。特にアグネス・オーウェンズの「機能不全家族」は語り手の女の子がエリア・カザンの映画《ブルックリン横丁》の主人公を思い出させるところがあって、おかしみと切なさの按配がよかった。
 印象に残ったのは、理想から遠ざかるアメリカと家族(小説)にまつわるお話。「昔のアメリカの小説はハックやギャツビーなど孤児のようなキャラクターが多く登場した。しかし、ここ20年で“家族”の話が増えてきた。アメリカ人に訊いてみると、50年代《パパはなんでも知っている》などのテレビ番組で核家族の理想ができあがった。しかし、いまの現実は家族が壊れ、理想との落差が大きくなっている。ロシアなら“それが人生だ!”となるところを、アメリカはそれでも理想を追いかける」といったようなことをおっしゃっていた。
 家族の話が増えてきたのってわりと最近なんだなとか、この“理想とのギャップを埋めようとする”ところがアメリカの魅力でもあり、苦しいところでもあるのかなあなどとつらつら考えた。

 柴田さんの朗読は初めて聴いたけど、おばさんや少女の台詞もすごくしっくりきてよかった。あれはやはりご自分の訳だからだろうか。ちょうど柴田さん訳のオースターの『ティンブクトゥ』を読んでいたときだったので、続きを読む際も柴田さんの声が聞こえてくるような気がした。
 話がそれるけれど、朗読というと大学時代の米文学史の授業を思い出す。エレガントなマダム風のI先生がときどき、原文を読みあげてるうちに演技の域にはいっちゃって楽しかったのだ。南部の荒くれ者になりきっちゃったりすると、外見との差が大きくて(笑)。I先生、きっと演劇部だったんじゃないかな。授業の内容より、こういうことのほうが記憶に残ってるわたしもどうかと思うが。

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ことし投票した作品

 年末になり、ことし刊行された本の各種ランキングが発表されはじめているが、わたしがことし投票したのは週刊文春ミステリーベスト10(海外版)、翻訳ミステリー大賞一次投票、ヨコミス2013の三件。このうち、文春は本日発売される号に掲載とのことで、きのうウェブでランキングが発表になった。
 どの作品をどこに、どれを何位に、というのを抜かすと、わたしが投票した作品は下記の九作品になる。

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『貧乏お嬢さま、メイドになる』 (リース・ボウエン/ 古川奈々子/コージーブックス)
『11/22/63』 (スティーヴン・キング/白石朗/文藝春秋)
『跡形なく沈む 』( D・M・ディヴァイン/ 中村有希/創元推理文庫)
『世界が終わるわけではなく』 (ケイト・アトキンソン/ 青木純子/東京創元社)
『シスターズ・ブラザーズ』 (パトリック・デウィット/茂木健/ 東京創元社)
『女王陛下のユリシーズ号』 (アリステア・マクリーン/村上博基/早川書房)
『チャリング・クロス街84番地』(へレーン・ハンフ/江藤淳/中公文庫)
『HHhH』(ローラン・ビネ/高橋啓/東京創元社)
『遮断地区』(ミネット・ウォルターズ/成川裕子/創元推理文庫)

 旧作やミステリ外の作品が入っているのは、ヨコミスがことし読んだものならOK的な自由なくくりだから。
 このなかでリース・ボウエンの『貧乏お嬢さま、メイドになる』はランキングには入ってこないかもしれないけれど、『バグダッドの秘密』やトミタペものなど、クリスティの冒険ものが好きな人はきっと楽しめると思う。すでに続篇も出ているので早く読みたい。あ、でも、気分がどよよ~んとしてしまったときの回復剤にとっておこうかな。そういう本も大事よね。
 ほかの作品については、また別の機会にちょこちょこ触れたいと思う。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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