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〈シェルブールの雨傘〉

(2015/05/29)

 先週、午前十時の映画祭で〈シェルブールの雨傘〉を観てきました。昨年、舞台版を先に観て、オリジナルの映画もぜひ観たいと思っていたのです。


(↑舞台版ダイジェスト映像)

 いやー、噂には聞いていましたが、色彩がすばらしかった! インテリアや50~60年代ファッションが好きな人にはたまらないでしょうね。ストーリーはほろ苦いのだけど、目にはとても楽しい作品でした。

 舞台版の記憶はかなり薄れつつあったのですが、映画と両方観てみたところで気がついたことをいくつか。
 まず冒頭とラストについては舞台版がオリジナル映画を絵的にかなり忠実に再現していたのだとわかりました。あれは映画版のファンだった人には嬉しかったのでは。
 大きく違うなと感じたのは、舞台版のほうが戦争によって引き裂かれるふたりの悲劇度が色濃く打ち出されていた点。野々すみ花さん演じるジュヌヴィエーブがか弱い薄幸の美少女というイメージで、「この役をカトリーヌ・ドヌーヴが演じたのか」と舞台版を観たときに少し不思議に思っていたのでした。映画版を観てみると、ジュヌヴィエーブは、苦悩しながらも宝石商との結婚をみずから選択したという印象でした。ドヌーヴのジュヌヴィエーブは若くかわいいながらも、意志の強さが感じられる演じ方。舞台版では戦場でのギイ(井上くん)の様子が描かれていて、そこも恋人との連絡が途絶えたがゆえのやむなき結婚という感じを強めていたように思います。この違いのため、おのおの別の相手と家庭を持ったジュヌヴィエーブとギイが再会し、別れるラストでは、観客の胸にこみあげる感慨が舞台版と映画版では種類が異なりました。どちらもそれぞれよかったんですけどね。


(↑映画のラスト)

 あと舞台版の宝石商(鈴木綜馬さん)は年齢設定がずいぶん上な感じだったので、ますますジュヌヴィエーブの結婚の悲愴感が強調されたのかも。
 映画も舞台も観客の年齢層がわりと高めだったのが印象に残ってます。まあ、わたしが観にいったのはどちらも平日なので、それも理由とは思いますが。

 午前十時の映画祭、つぎは8月に〈王様とわたし〉を観にいければと思っています。テレビでしか観たことないので。今回の〈シェルブールの雨傘〉も、色彩がきれいなだけに大きなスクリーンで観られてよかった。


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映画〈プロデューサーズ〉

(2015/03/13)

 2005年のミュージカル映画〈プロデューサーズ〉が期間限定で上映されていたので観てきました。
 主演のネイサン・レインとマシュー・ブロデリックは映画のもとになった2001年のブロードウェイ・ミュージカルでも主役を務めたふたり。
 このミュージカル、そもそも1968年のメル・ブルックス映画がオリジナル。わたしはメル・ブルックス作品を観たことがないのだけど、キーワードを書き出すと、ヒトラー、ゲイ、きわどさ、下ネタ、あたりになるだろうか。女性蔑視や移民蔑視になりかねないぎりぎりの表現で笑いをとりにいっている感じ。おばかコメディなんだけど、お気楽じゃない。わたしの好みとは言えないものの、風刺の入れ方のあんばいがうまく、メル・ブルックスに対して興味が湧きました。今回の映画の監督は2001年の舞台と同じくスーザン・ストローマンなんですけどね。
 ミュージカルとしては映画よりも舞台で観たほうが数倍よさそう。

 今回の映画版にはスウェーデン人のセクシー女優ウーラ役でウマ・サーマンが出ているのだけど、ダンス・シーンで「ん?」と思ったら、やはりそこだけ舞台版でウーラを演じた女優さんによる吹き替えだったとのこと。
 ミュージカルの映画化は、ダンスや歌をどうするかがむずかしいですよね。
 わたしは小学生のころ〈サウンド・オブ・ミュージック〉をテレビで観ていたく感動し、ジュリー・アンドリュースのファンになったのだけど、そのとき姉から〈マイ・フェア・レディ〉のキャスティングにまつわるゴタゴタを聞いたせいで、わたしのなかでオードリー・ヘップバーンは長らく「ちゃんと歌も歌えないのにジュリー・アンドリュースから〈マイ・フェア・レディ〉の主役を奪った人」としてイメージが定着することになりました……。オードリー自身は歌を一生懸命に練習し、自分の歌声が使われると信じていたのにね。
 〈ウェスト・サイド・ストーリー〉のマリア役、ナタリー・ウッドも撮影に自分の歌が吹き替えになると知らされて激怒したとか。

 〈プロデューサーズ〉で落ち目プロデューサーのマックス・ビアトリックを演じたネイサン・レインは、1992年版ブロードウェイ・ミュージカル〈ガイズ・アンド・ドールズ〉で(映画ではシナトラが演じた)ネイサン・デトロイト役を演じた人。そんなこともあって、ここのところ〈ガイズ・アンド・ドールズ〉のサントラがひさしぶりにヘビロテ気味です。あー、秋からのヅカ版〈ガイズ・アンド・ドールズ〉が楽しみ!

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〈ビリー・エリオット ミュージカルライブ~リトル・ダンサー~〉

(2014/12/06)
〈ビリー・エリオット ミュージカルライブ~リトル・ダンサー~〉を観てきました。
 2000年の映画がすごくよかったので、ウェストエンドでミュージカル化されたことを知ったときから「観たい~!」と思っていました。だから今度のライブ上映版の公開は本当に嬉しかった。TOHOシネマズ日劇と六本木は12月11日までの1週間の上映。そのあと各地で順次公開予定とのことだけど、ご興味のある方はお早めに!

 ストーリー等については↑のリンク先をご覧ください。有名な作品だから、ご存じの方も多いですよね。
 今回、わたしがこのライブ上映版を観て強く感じたのは、こういう作品に子供のころ、若いころに触れる機会があれば、偏見の少ない大人になるのではということ。2000年の映画版にも出てきたマイケル(主人公ビリーの親友でゲイ)とビリーの友情が最高! ビリー役のエリオット・ハンナくんとマイケル役のザック・アトキンソンくん、すごくよかった! 彼らの演技とダンスと歌、また別の作品で楽しめるといいなあ。

 ミュージカル版は2000年の映画よりも泣かせる場面が多かったかなという印象です。そんななか、お笑い担当的な役まわりだったビリーのお祖母さんを演じたアン・エメリーさん――1930年生まれ、御年84歳!――がフィナーレでチュチュを着て登場したら、あまりの美脚なのでのけぞりました! イギリス演劇界のティナ・ターナーと呼ばせていただきたい(笑)。

 ああ、それにしてもやっぱりミュージカルは俳優さんたちのエネルギーがじかに感じられる生で観るのがいちばんですよね。ウェストエンドでミュージカル三昧したい!
 とはいえ、こういうライブ・ビューイング版のよいところは生ではありえないアングルからの光景が楽しめたり、出演者の表情がアップで観られるところ。今回はマイケルを観るときのビリーの自然でやさしい表情をアップで観られたからこそ、感動もひとしおだった気がします。

 映画にしろ、舞台にしろ、本にしろ、片肘張らずに「そんなことにこだわったりしたらおかしいよ?」とか、自由でフェアなものの見方を教えてくれる作品はいいなと再確認。翻訳の仕事でも、そういう要素が少しでもはいっている作品にかかわれたときって嬉しいものなあ、なんてことを考えながら帰ってきました。

 自分が好きなタイプの映画や舞台を観て、感動の抽斗を増やしておくことは大事とこのごろあらためて感じています。以前は締切との関係で観劇などの予定を入れるのを躊躇してしまっていたのだけれど、こういうことのためには無理してでも時間を作ったほうが何かとモチベーションもあがるし――って、またまたわれながら単純(苦笑)。

 あああ、先月アダム・クーパーの〈雨に唄えば〉を見送ったのが悔やまれる~。

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〈リスボンに誘われて〉ほか

(2014/10/13)
 きょうは最近観た映画2本と、それに関連して思い出した映画について書きたいと想います。

 一本目は〈リスボンに誘われて〉。一冊の本との出会いをきっかけに、主人公がリスボンに旅立つ――という話で、主人公をジェレミー・アイアンズが演じています。出演陣がとにかく豪華。だってジェレミー・アイアンズのほかにシャーロット・ランプリング、クリストファー・リー、レナ・オリン、メラニー・ロラン、それにブルーノ・ガンツですよ。内容はポルトガルのカーネーション革命にかかわった若者たちの物語がメインで、どちらかというと男性好みの作品という印象。革命家たちを弾圧する残忍な警官が出てくるんですが、そこから思い出したのが1989年公開の〈ミュージック・ボックス〉
 〈ミュージック・ボックス〉は父親が第二次大戦中、ナチスに協力してユダヤ人を迫害した疑いをかけられた弁護士の葛藤と、真実が明らかになっていく過程を描いた映画で、観終わったときは本当にぞっとしました。
 衝撃が強くて、後日、家でもこの映画の話をしたとき、正確には憶えていないけれど、「日本人だと、身内にあそこまで恐ろしい過去を持つ人がいる可能性はないからよかった」というようなことを言ってしまい、親に「日本の軍人がアジアで何をしてきたか、考えてみろ」とたしなめられたのも、この映画に関しては強く記憶に残っています。日本人が戦前・戦中に海外でしてきたことは、ほかの映画や本でなんとなく知っていたはずなのに、それがすっかり飛んでしまった自分が恥ずかしかったので。
 〈ミュージック・ボックス〉はベルリン映画祭で金熊賞を受賞した傑作で、ものすごく見応えのあるサスペンスでした。それなのにロードショーはわりと早く終わってしまって、前売りを買っていたわたしと友人は最終日に慌てて観にいったのを憶えています。そして観客は年配の方が多かったような。

 最近観たもう一本は〈ケープタウン〉。暴力的なシーンが大丈夫な方なら、観て損はないと思います。わたしは暴力シーンが苦手なんですが、それでもいい映画だと思いました。特にラスト近くの映像と音楽は美しかった。主演のオーランド・ブルームは、王子キャラ以外もちゃんと演じられるほんとにいい役者だと思うから、とにかくこれから出演作に恵まれるよう祈ります。
 〈ケープタウン〉はアパルトヘイト撤廃後の南アが舞台ですが、アパルトヘイトがテーマということで思い出したのが1988年公開の〈ワールド・アパート〉。もうこれはほんとにしょうもない思い出なのだけれど、観終わった瞬間に友達と「そっちのアパートだったのか!」と苦笑してしまって……。タイトルのアパートは、“apart=隔てられた”で、要するに“人種によって隔てられてしまった世界”という意味のタイトルだったんですよね。それをアパートメントの省略形だと思っていたわたしたち。アパルトヘイトがテーマの映画と知りながらも、いろんな人種の人たちが共に暮らすアパートが出てくるのだろうと勝手に想像していたのでした。でも、この邦題、同じような勘違いをした人はきっとほかにもいたはず……と思うぞ。


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ドストエフスキーと愛に生きる

(2014/06/15)
ドストエフスキーと愛に生きる

 1923年キエフ生まれのロシア語→ドイツ語翻訳者、スヴェトラーナ・ガイヤーさんの晩年を追ったドキュメンタリー。渋谷アップリンクの上映最終日になんとか観ることができました。上映回数は減っても4カ月近く上映してくれたアップリンク、すばらしいわ。

〈スヴェトラーナさん略歴〉
 スターリンの粛正により父を失ったのち、ドイツ軍占領下のキエフで語学の才能を生かし通訳として働く。1943年、ドイツ軍の撤退を機に母親とドルトムントへ移り、その後はドイツ在住。
 第二次大戦後に比較言語学を学び、1957年ごろからロシア文学のドイツ語翻訳を始めると同時に大学で教壇に立った。2010年に死去。享年87歳。

 冒頭で印象的だったのはスヴェトラーナさんの声の若さ、きちんとアイロンのかかった白いシャツ。彼女がアイロンかけをする場面に移って「textile」と「text」の語源が同じという話になるんだけど、「洗濯された織物は方向性を失う。だから、(アイロンをかけて)糸の方向をもう一度整えてやる」という考え方がユニーク。
 アイロンがけだけでなく、スヴェトラーナさんの暮らしぶりは衣食住のどれについても丁寧。パンフレットでは「食」の部分がクローズアップされていたけれど、玄関ホールにとても自然にきれいな花が飾られていたりして、住まいも居心地よさそうだった。

 翻訳に関しては訳稿をタイプで打ってくれる女性、読み合わせをしてくれる男性(編集者?)との共同作業の部分がカメラにおさめられていておもしろかった。男性が提案した変更についてスヴェトラーナさんが無言で考えこんでいると、男性「わかりました! 降参だ。このままで」、スヴェトラーナさん「あとでひとりで考えてみます」といったようなやりとりが交わされたり。

 翻訳の話をしているときのスヴェトラーナさんの表情には自信と誇りが表れているというか、強さが感じられた。それが第二次世界大戦中の話になると、変わる。
 パンフレットで『ダ・ヴィンチ』編集長の関口靖彦さんは「彼女は、本作で自分の過去のすべてを言葉にしてはいない」と書き、ロシア文学者の亀山郁夫さんは「(ゲシュタポの将校ケルシェンブロック)伯爵との間には、何かしら語るに語りえない謎が潜んでいるような印象を与える」と指摘している。それを強く感じたのが戦時の経験について語る彼女の表情だった。何か罪悪感を抱いているような、怯えともとれるような表情だったと思う。
 映画を観終わったあと、彼女がどんな経験をしたのか少し思いめぐらしたりもしたけれど、あの表情を見ると語られなかった真実を穿鑿したいとは感じなかった。数奇な運命を乗り越えて生き延びた、精神的にも強いはずの人がああいう表情になってしまう経験だったんだなとわかるだけで充分というか。

 この作品、DVD化されるだろうか。DVDでもう一度観てみたい。

プロフィール

島村浩子

Author:島村浩子
東京下町在住の翻訳者。ミステリ・ロマンス・ノンフィクション・児童書など訳してます。本のほかに映画・洋楽・ミュージカルが好き。
Twitter: @rhiroko
Instagram:@reepicheeph
Fedibird(マストドン):@rhiroko
Bluesky:@rhiroko
タイッツー:@rhiroko
訳書一覧はWorks 仕事をご覧ください。

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